蝶よ華よ

□第二十二章 華鬼の行(ゆき)先
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「それにしても、部活なんて懐かしいなー」

「『懐かしい』ってほど前の話じゃないでしょ、陸の場合」

「いや、懐かしいで……。去年の陸はめっちゃ健気で可愛らしかったわ」

「ちょ、光晴?!」


若干遠い目をして話す光晴を陸が慌てて止める。


「確かに、去年の陸さんは見ていてとても微笑ましかったですねぇ」

「麗二先生まで……!」


追い討ちをかけるような麗二の言葉に、羞恥から陸の顔は真っ赤に染まってしまっている。





「あの、早咲くん」
「ん?どうしたの」

「陸さんは、何の部活に入っていたんですか?」

「ああ……調理部だよ。陸って、鬼ヶ里に来たときは料理全然出来なかったからさ。学校でも、家でも料理本読んだりして――健気だったよねって」

「……なるほど……」


昔は料理が出来なかったというのは聞いたことがあったが、今の彼女の料理の腕があるのはそれが理由なのだと納得した。




「陸に言うといつも否定されるんだけど、料理習う気になったのは絶対、光晴のためだよ。言い出したのはまだ想いに気付く前だったみたいだけど、光晴に食べてもらいたいって思って――」

「ちょっと水羽!神無ちゃんに適当なこと教えないでよ!」

「……ほらね、否定した」


「でも、それってすごく……素敵だと思います」
「か、神無ちゃん……!」


好きな人のために頑張れるということは、とても素敵なこと。それを神無が素直に伝えれば、陸はばつが悪そうに――しかし照れくさそうに笑った。



(それにしても、なんで私が辱められる流れになったんだろう……)














この次の日、神無ちゃんが三翼に黙って学校を抜け、どこかに行った。それも一回では済まず、定期的に出掛けるように。

――しかしそれは三翼から離れたいというわけでも、鬼ヶ里から離れたいというわけでもなく、未だ失踪中の木籐を説得するため。

神無ちゃんが説得するなら、木籐は必ず帰って来る。そう思うけど……よくわからない行動はいつやめてくれるのかな。



はやく、神無ちゃんが幸せになれるといい。











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