蝶よ華よ

□第十三章 格好いいひと
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鬼ヶ里に帰って来てからの陸は、二階の自分の部屋と一階のもえぎの部屋を行き来する生活を送っていた。本来なら学校に行かなくてはならないのだが、自分の鬼も、その庇護翼もいない状況では危険だと判断したのだ。








「もう五日……」


あれから五日。考える時間は有り余るほどあった。――でも、わからない。



(私はどうしたいんだろう……。神無ちゃんが光晴を選ぶって言ったら、私は光晴を諦めるのかな。諦められるのかな……)



考えれば考えるほど、陸は自分に自信がないことに気付いてしまった。


「……こんなんじゃ、捨てられても仕方ないのかもね……」








するとその時、部屋に備え付けの電話が鳴り出した。


「はい、もしもし。――もえぎさん?」

「<陸さん?……つい先程、杏さんが職棟にいらしたんですが、陸さんが連絡をしていないのならと思って帰してしまったんですけれど……よろしかったですか?>」


「え、杏……?あんず……。――あああっ!!!」


(杏に連絡するの、すっかり忘れてた……!!)


「すみませんもえぎさん、ありがとうございます!杏には私から、すぐに連絡しますから!」

「<そうしてあげてください。杏さん、すごく心配してましたから>」


電話越しに、もえぎが小さく笑っているのがわかる。陸はそれに構わずに通話を切り、――ここ数日、すっかり存在を忘れていた携帯電話を探し出す。




「――あった!……って、電源落ちてるし。もー、充電器どこだっけ……」


充電器も無事探し当て、接続して電源を入れた陸が見たものは。





「着信二十件、メール十五件……発信者、全部杏……」





携帯を頻繁に使わない陸にとっては、怖さを感じるほどの履歴の数。――しかしこれは、杏が陸を心配していたという何よりの証拠。


(そうだ……。森園くんたちと保健室行くって言ってからばたばたと生家まで行って……。杏に何も伝えてなかったもんね)

 
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