蝶よ華よ
□第十四章 咲いた妖花
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陸が郡司に付き添われて鬼ヶ里に戻って来てから一週間と少し経ったある日、神無と三翼が帰ってきた。
時間帯としてはちょうど夕飯が済んだ頃であったが、もえぎは麗二から事前に聞いていたのか、彼らを見かけてすぐに調理に取りかかっていた。
「もえぎさん。私、部屋に戻りますね」
「はい、わかりました」
「――っ陸!」
「!」
光晴に名前を呼ばれて、振り返らないままに足を止めた。
「陸……俺は」
「ごめん」
「っ……」
一言だけ告げて、陸は部屋を出て行ってしまう。
「――光晴さん」
「んん……?」
「陸さんのこと、待ってあげてくださいね」
もえぎの言葉に、光晴は気まずそうに頭を掻いた。
「……“待つ”っちゅーより多分、俺次第やな……」
今のやりとりに疑問を持った神無は、遠慮がちに口を開く。
「あ、あの……!『陸さんのこと待つ』って、どういうことですか……?」
「ああ……神無ちゃんには言うてなかったな。実は、陸も生家に来てたんやけど……俺とちょっとあってな、先に帰ってたんじゃ」
「先に……って、」
思い出すのは、光晴に告白されたあの夜のこと。そのことを陸が知って、二人の関係に何かあったんだとしたら――……
「私、陸さんの部屋に行ってきます」
「え?ちょ、神無ちゃん?!」
「失礼します」
足早に神無は部屋を後にする。光晴は、その背を呆然と見つめるだけ。
「え、あれ……今の、ホンマに神無ちゃん?」
「なんか変わったよね。ちょっと積極的になってる」
「いい傾向ですねぇ」