蝶よ華よ
□第十四章 咲いた妖花
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ピン、ポーン――
「はーい、誰?」
控え目に鳴らされた呼び鈴を聞いて玄関へ出て行くと、インターホンから更に控え目な声が聞こえてきた。
「<あの、朝霧です>」
「神無ちゃん?」
玄関で立ち話をするつもりはないのですぐに部屋に神無を招き入れる。部屋に来たということは何か用があるのだと陸は踏んでいたが、神無は何かを躊躇うかのようになかなか話を始めない。
「神無ちゃん。どうかしたの?生家で何かあった?」
「……あの、私……華鬼のことが、気になるんです」
「え?」
「どうしてなのかはわかりません。でも……」
「ちょっと待って神無ちゃん。えっと、木籐のことが気になるってことは……つまり?」
「あ……の、だから、士都麻先輩の……ことで」
――ああ、ようやく合点がいった。神無が突然、何故自分の部屋を訪ねたのか。
「ごめん、心配かけちゃったね」
「そんな……!」
「でも大丈夫だよ。神無ちゃんを恨むとか、そう言う気持ちはまったくないから」
その言葉に、神無はふるふると頭を振る。
「そうじゃありません。……私、陸さんには幸せに、なってもらいたくて」
「――……神無ちゃんて、本っ当いい子だよね。光晴が好きになるのもわかる。きゅんときた」
「えっ」
(ほんと……なんで木籐は、“神無ちゃん”をちゃんと見てあげないのかな)
ぼっ、と顔を赤くする神無を見て、陸は彼女のことを益々愛しく思う。
「お世辞じゃないよ。だって、私は神無ちゃんに嫉妬してたんだもん。――出会った日に神無ちゃんの味方になるって言って、誰を選んでも応援するつもりだった。……でも、光晴を選んだらって思って……不安で」
「陸さん……すみませ「謝らないで?」
「神無ちゃんはなにも悪くない。――ただ光晴のことは、もう少しかかるかな」
「はい……」
そう言って苦笑する。
神無に光晴への気持ちがなくとも、光晴にはあるのだ。知らなかった頃の関係に――すぐには戻れない。