蝶よ華よ

□第十七章 うつりゆくもの
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「――あ、いたいた。神無ちゃんっ!」


「え?あ……」


女子寮の通用口付近でうずくまる神無を見つけた陸が走り寄る。




「よかった……無事だね。杏と会ったのは覚えてる?」

「あんず?」

「もしかして自己紹介されてない?――三つ編みの女子、いたでしょ。あれが私の親友、三浦 杏っていうの」

「あ……!」


三つ編みという外見的特徴でわかったのか、神無がちいさく反応した。


「あの子、『神無さんがいなくなった!』って言ってテンパってるままだからさ、合流して安心させてやりたいんだ。行こ?」

「はい」


差し出された手を取って、立ち上がろうとした神無だが――




「……すみません、立てない、です」

「え、腰抜けた?んーじゃあ……光晴!いるっ?」





「どないしたん、陸ーーって、神無ちゃん!こんなトコにおったんか!」


呼んで十秒もしない内に現れた光晴に、神無は呆気にとられる。


「早速で悪いんだけどさ、立てないみたいなの。職棟までお願いできる?」

「よっしゃ。じゃー、ちょっとごめんな?」

「わ、っ……!」


一言断りを入れてから、光晴は軽々と神無を抱え上げた。



「絶対に落とさないでよー」

「当ったり前じゃ!」







それから、水羽と杏と合流して職棟に戻り、もえぎの用意してくれた夜食をみんなで食べたのだった。

 
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