蝶よ華よ
□第十九章 楽しみの輪
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「うわ、これおいしい!もう一個買えばよかったかなぁ」
「本当……あなどってた。夕方じゃ、もう無いよね」
「明日、士都麻先輩にねだってみたら?」
「ふふ、うん」
模擬店をいくつかまわり、最後に買ったたい焼きを堪能していると、ふと陸が壁時計を見た。
「あ、やばっ」
「ん?どうしたの?」
「もう交代時間過ぎてる……」
「え!?わ、マジだ!」
「急いで――「あーーっ!!神楽と三浦!やっと見つけた!」
『急いで教室に』そう言いかけた陸の声を遮って、聞き覚えのある声が二人を後方から呼んだ。
「「げ、室長!!」」
「交代五分前には教室にいろって言っただろ!シフト狂わすなよ」
「ご、ごめん。すぐ戻るから」
「じゃーね室長!ゆっくり休んで!」
「あ、オイ!」
まだ言い足りなさそうなのはわかっていたが、怒られているのもタイムロスになる。ということで、杏は陸の手を取って走り出す。
「……三浦、足速ぇな……」
「ふーっ、危なかった。室長が説教はじめてたら余計遅刻だったよ」
「ちょ、杏、速……」
走る前と表情の変わらない杏の横には、走ったせいでまだ息の整わない陸がいた。
「陸、もうバテたの?」
「よ、よくもまぁこの混雑した校内を全力疾走できたねぇ……っ」
「いやいや、もうちょっと出せたよ」
「……もういい。教室入ろ」
杏と自分の運動能力差を改めて感じた陸であった。