蝶よ華よ
□第二十章 大切な人に……
1ページ/5ページ
文化祭二日目。去年の陸は二日間の日程を友人である杏と過ごしたため、今年……つまり今日は光晴と過ごす初めての文化祭――
――なのだが。始まって早々、二人の姿は執行部の部室にあった。
「昨日の夜からなんか変だと思ってたけど……。神無ちゃんがねぇ、」
「すまん……」
事の発端は昨日のお昼過ぎ、陸のクラスを出た後だ。
調子の悪そうな神無を心配した光晴の手を、神無が振り払い拒絶。――それから現在まで、三翼まとめて避けられているらしい。
「私が言うのもなんだけどさ、光晴、最近女の子から避けられすぎじゃない?」
ケンカ(&禁止令)の件で陸と杏、昨日の出来事から神無。――短期間で三人目である。
「いや、もうホンマに……。さすがにキツいわ」
「三翼みんなだし……神無ちゃんのことだから、他に理由があると思うし大丈夫だよ。今は水羽がついてるんでしょ?」
「遠くから見守ってる、って感じやけどな」
「なら心配いらないね。執行部の方は光晴が元気ないとみんな心配しちゃうんだから、少し寝なよ。私はここにいるから」
「せやけど陸……」
「いいの!」
このところ、文化祭の準備に追われていて体力的にも疲れはあるし、そこに心労も加われば体調を崩すのも無理はない。そんな状態の光晴を連れ出すことは、陸にはできなかった。
「悪いと思ってるならちゃんと休んで、早く元気になってよ」
「ホンマありがとうなー、陸。……せっかく杏ちゃんに禁止令取ってもらったんに、情けない、な……」
「…………え?」
今、光晴はなんと?
「ちょっ、禁止令取ったってなに?!聞いてないよ!」
「…………」
「……寝ちゃった」
はぁ、と息をついてから部室をぐるりと見やる。大きめの棚を覗いて毛布を発見した陸は、それを光晴にふわりとかけた。
(そんなすぐ寝れちゃうくらい疲れてるなら、私が朝、学校休む?って訊いたとき頷けばよかったのに)
頷くはずないこともわかっているけれど。