蝶よ華よ

□第二十章 大切な人に……
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「……今日のこと、光晴も楽しみにしてくれてるっていうのは私も知ってたよ。でも、そのために無理してほしいなんて思ってないんだからね」



(だから今は、ゆっくり休んで――)



その想いを込めて、光晴の額にそっと口付ける。――ガチャ。


「あ。」


「ッ!!?」


ドアの開く音が聞こえてからばっ!と離れたのだが――ばっちり見られた。その事実に、陸は一瞬で赤面し顔を逸らした。

入って来たのは執行部の男子生徒。陸とも顔見知りだ。


「いやー、すみません。悪気はないんですが」

「う、うん。だいじょうぶ、わかってるから」

「忘れ物を取りに来ただけなんで、すぐ出ます。ついでに必要そうなものも持ってっときますから」


思う存分イチャついてください。――そこまで言ってはいないが、彼の言葉にはそんな意味が含まれていた。




「あのね、今のはついっていうか、なんていうか――「会長の具合、どうですか?」


ふいに問われたことに、言い訳をする言葉が止まる。


「あ……うん。疲れてるだけだから、休めば良くなると思う」

「それはよかった。今朝の会長の顔色、悪過ぎて……おかげでこっちまで真っ青でしたよ」

「光晴、すぐ無理するから。執行部のみんなに大丈夫だって伝えてくれる?」

「はい。今年の文化祭は神楽さんといれるからって、すごくはりきってたんですよ。……まぁ、その反動が当日に来るなんてさすが会長、ってみんな言ってますけど」

「あはは……」

「じゃあ、俺はもう行くのでごゆっくり」


にっこりと笑って彼は部屋を素早く出て行った。


「っだから、イチャつかないってば!」



(「今年の文化祭は神楽さんといれるから――」)


先程の言葉を思い出して、陸はちらりと光晴を見て顔を赤くする。


「…………。ほんと、バカ」

 
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