蝶よ華よ
□第二十三章 祭りのはじまり
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神無、水羽と別れた陸が一人、二年の階を進んでいると――八組の前で立ち尽くしている友人を発見する。
「杏!おはよ」
「あ、陸!おはよー、よかったぁ来てくれて」
「うん、私も。教室入るの、なんか勇気いるよね」
教室内には先程見たデタラメ絵本と大差ない光景が。ただひとつ違うのは、“女子だけ”という点だ。
黒板にはでかでかと“男子は七組で着替えること!”とのお達しがされてあった。
「ね、コレが衣装?」
「みたい。どうせなら可愛いのがいいなー」
それぞれの机の上に置かれた白い大きな箱。中に入っていた衣装とは――……
「うわぁ、いい!可愛いよ、陸!」
「……可愛いのがいいとは言ったけど、すごくキャラ違う気がする……」
「えー、似合うよ。だって実際、士都麻先輩のお姫様でしょ」
「〜〜っ……」
杏の言葉に、陸は否定できずに口籠る。
陸の格好はアイスブルーのロングドレスに、淡いピンクのストール。頭にはキラキラと輝くティアラが乗せられ、足元にはガラスの靴――いわゆる、シンデレラの衣装だった。
(会長の花嫁である神楽さんの衣装には、よりこだわりましたよ!! BY.執行部)
「あ、ねぇ。金髪のウィッグもあるよ」
「やだよ。それは本当に似合わないから」
そう言って陸は自身の赤いリボンを普段とは違う真後ろへ括りつけた。
「それもそうだね、これはいっか」
おもむろに、ウィッグは白い箱へ仕舞われた。
そんな杏の衣装は、黒い帽子に同色のワンピース。オプションにりんごがあるところから、白雪姫の魔女だろう。
「私、陸みたいなお姫様とはいかなくても、もうちょっと別のが良かったな。白雪姫の魔女っておばあさんでしょ?……しかもコレ毒りんご」
「シンデレラの魔女ならよかったのにね」
「ほんとほんと!――っていうか、着替えてなにするの?」
「さぁ……?光晴を除いた執行部の独断だから、あんまりいい予感はしないかな」
はぁ、と溜息が零れる。