蝶よ華よ
□第四章 守り手たち
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「求愛、か」
自分たちの庇護翼を見送りつつ、水羽が呟く。
「もえぎが部屋に入れてくれてよかったよね。ついたてまで用意してくれて」
「でも、出て行くことになんてならないって信じてたんだよ、もえぎさん。いくらあの木籐だって、自分の花嫁なら大丈夫って……」
「……そ、そうですね……」
「求愛したこと言った?」
中途半端な返事とともに苦笑いを向けられ、水羽はじっと麗二を見た。
「後悔してる?」
「いえ、お守りするべき方ですから」
「光晴は?」
向けられた言葉には陸が答えた。
「もう、済んだ話だよ。それに……」
「ん?」
言いかけた言葉を呑み込む。本当は嫌だった、なんて言っても困らせるだけで、状況は変わらないのだから。
「……何でもない。私も教室戻るね!じゃっ」
そう言い残して、陸は早足で保健室を去った。
「……光晴」
「あぁ、わかっとる。陸が本音を言わんのは俺のせいや。……せやけど、俺だけ求愛せんわけにはいかんかった」
「そうですね……。ただまだ、陸さんは鬼ヶ里に来てから、一年ですから」
一年。それは長いようで短い時間。
麗二も花嫁がいる身ではあるが、もえぎと陸では話が違ってくるのだ。
それから三人の男たちは決意を新たに、ハイタッチをしたのである。