蝶よ華よ

□第六章 変調
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「華鬼?――何がそんなに苦しいの?」


華鬼は危険だと、己の勘が警告し続けるのに、どうして自分は華鬼に近寄ろうとするのだろうと、神無は理解が出来なかった。









「陸ーー……。夏休み明けてから、一体何が起きてるの?」

「え。どしたの、急に」


授業の合間の休憩時間に、ふと杏が口にした。


「だって、陸、元気ないもん。……私じゃ頼りないかもしれないけど、話聞くよ?」

「杏は頼りなくなんてないよ!……でも、」

「木籐先輩のこと?」

「……木籐?」

「違うの?昨日女子寮に木籐先輩が来て、誰の部屋に泊まるーーって白熱バトルだったの」


「……」


その話を聞いて、陸は絶句した。



(やっぱり昨日は杏の部屋に行かなくてよかった……。郡司と透には悪いことしたけど)



――そう、本当は杏の部屋に行く、という選択も出来たのだ。だが敢えてそうしなかった。女子寮には自分を妬む花嫁が多くいるというのも理由だが、一番の理由は違う。
杏は陸の花嫁としての欠陥は知らない。――それだけは、伝えられなかったのだ。



「……今起きてることは、木籐って言うより……木籐の花嫁さん、かな」

「花嫁さんが悪いの?」

「ううん、すごくいい子。……本当に、いい子なの」

「ふぅん……?」


(幸せになってほしいよ。でも……)



譲れないもの、ひとつ。



「じゃあさ、陸は今何に悩んでるの?」

「……悩んでないよ。ただちょっと、羨ましいんだ」

「……」


まだ聞きたいことは沢山あった。でも、陸の寂しそうな表情(かお)を見て、杏は押し黙った。


(……私も、鬼の花嫁だったら……陸の苦しみを、わかってあげられたかもしれないのに)








「神楽さん!!」

その場の雰囲気を壊すような大きな声が教室内に響く。


「……森園くん?どうしたの?」




「「光晴が麗二に連れて行かれた!!」」




「…………はあ?」

 
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