蝶よ華よ
□第七章 狂宴の夜
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「あの」
夕食の後片付けを職棟の女性陣がしている最中、神無がもえぎと陸に問いかけた。
「刻印は、消せるんですか?」
隣接するリビングでくつろぐ三翼を気にしながらの質問に、二人は首を傾げる。
「消せない、と聞いています。遺伝子が変異して、その影響で痣として刻印が出てるって話ですから……」
「私も、もえぎさんと同じことくらいしかわからないな。……ごめんね」
「いいえ……」
神無は、貢 国一に言われた『刻印の消し方を知りたくないか?』――この言葉が気になっていた。……嘘かもしれない。でももし真実なら、もうこれ以上、誰にも迷惑をかけずに済む、と……。
「神無さん?」
「なんでもないです、あの、おトイレ……っ」
そう言い残し、神無はキッチンを飛び出した。
「「…………」」
神無の後ろ姿を見つめてから、もえぎと陸はお互いに顔を見合わせた。
「もえぎさん。神無ちゃん、何だか……」
「様子が変、ですよね?」
「はい」
ひとまず、トイレに神無がいないのを確認してから、二人はリビングに顔を出した。
「三人ともっ!……あのね、さっき神無ちゃんの様子がちょっと変で……どこか行っちゃったみたいなんだけど、何か知って――」
ガタン!
――と、大きな音を立てて三人が椅子から立ち上がる。表情は皆、青ざめていた。
「陸、教えてくれてありがと!」
「今度は追いかけてくるんやないで!」
「もえぎさん、陸さんをお願いしますね」
「はい、お気をつけて」
あっという間に三人は飛び出して行って、見えなくなる。
陸は、やはり先日、森園兄弟を追いかけていったことは伝わっているのかと肩を落とした。
(透だ……。報告の時にそれまで言ったんだ……)
追いかけてくるな――それでも。
雷鳴が響き、雨も降っている森へ進んだ彼らが、そして、そこにいると思われる神無が、陸は心配だった。
自然と、足が外へと向かう。
「陸さん」