蝶よ華よ
□第十章 想いの行方
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「麗二先生」
「はい?」
「麗二先生は……神無ちゃんは誰を選ぶと思いますか?」
麗二と二人で生家の監視をしていたところ、ふいに陸が呟くように問うた。それを受けて麗二は少し考える仕草をしてからゆっくりと口を開いた。
「誰を、ですか……。それは難しい質問ですねぇ。私を選んでほしいものですけれど、それを決めるのは神無さんですからね」
「……そうですよね。すみません、変なこと聞いて」
「いえ」
陸は淡く笑みを浮かべると、静かに立ち上がって麗二に背を向けた。
「おや、どちらへ?」
「ちょっと、水羽のところに行って来ます」
「ではお送りしま――「いえ。そんなに距離はないですから、一人で大丈夫です」
「――わかりました。ですが、お気をつけて」
「はい」
(麗二先生……何か気付いたかな、)
『水羽のところに行く』――これは嘘だ。
陸の足は水羽がいるところとは別の方角へと向いていた。光晴に『絶対にひとりになるな』と言われていたが……どうしても今は一人になりたい気分だったのだ。
(どうして……あんなこと訊いちゃったんだろう。神無ちゃんが誰を選ぶかなんてそんなこと――私が気にすることじゃないじゃない。……だって、私は神無ちゃんの味方になるって決めたんだから、誰を選んだって、神無ちゃんが幸せになるなら、たとえ――……)
――そして、ふと視線を向けた、その先にあった光景に、陸の思考は停止した。