蝶よ華よ

□第十一章 罅(ひび)
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「はっ……、はぁ。……ふぅ」



ただひたすら、がむしゃらに走って、ようやくキャンピングカーを見つけた時陸は、心底安堵した。
堀川 響が追って来る様子はなかったが、それでも恐怖が陸を取り巻いていたから。


(あの人……イヤだ、怖い)



堀川 響は神楽 陸を知らない。

――そのはずなのに、彼は陸の不安の根幹を簡単に揺らがせた。



(私は……ここに来るべきじゃなかったのかもしれない)



「私――、」












「陸さん?」


「!――れ、麗二先生っ……!!」


声に驚いて振り返れば、そこには数十分前に別れたばかりの麗二が立っていた。


「何かあった――と、訊くのは野暮ですね。その様子では水羽さんのところへは行っていませんね?」

「…………はい」

「とりあえず中へ入りましょう。話はそれからです」


そう促す麗二に陸はゆるく首を振った。


「何もないんです。……嘘をついたことは謝ります。でもほんとに、ひとりになりたかっただけなので。……ごめんなさい、もう休みます」


そのまま目を合わさずに、陸は車の奥へと入っていってしまった。



「陸さん…………」








 
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