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□本当は、
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「危ないっ」

いきなり後ろから突き飛ばされた。

「な、何すんだよ!……大佐?」

目に入ったのは、赤。
しかもそれはオレの好きな燃えるような赤ではなく、奥に黒を秘めた、――血の赤、だった。

「……ああ、大丈夫だ。このくらいの傷は慣れている」

オレの視線に気がついたらしい大佐が、いつも通り明るく、いつもみたいにヘラヘラして、まるで世間話でもするみたいな気楽さで言った。
多分、オレに気を使わせないように言っているんだと思う。けど、オレが気にしているのは傷の大小じゃない。
オレのせいで。他でもないオレのせいで大佐は怪我をした。
大佐はなんでもないように話しているけど、もうかれこれ5回、もしくはそれ以上にオレを庇って大佐は傷を負った。
オレが、オレがもっとしっかりしていれば、こんな風には。
気がついたら大佐がオレの顔を覗き込んでいた。

「あ、だっ……大丈夫なら、……いい」

本当は、全くよくないけど。
とりあえず、さっきまでと同じ答えを返す。

「そうか」

大佐も、さっきまでと同じ答えを返した。
辛いはずなのに。痛いはずなのに。
そんな事を考えていたら、突然地面が小さな音とともに弾けた。

「……?」

なにが、と言いかけたところで大佐に腕を強く引かれた。
瞬間、オレがさっきまでいたところの地面が集中的に弾けた。
瓦礫の山の陰に隠れると、大佐が口を開いた。

「奴ら、狙撃兵を使ってきたようだ」

指先でここから少し高いところにある瓦礫の山を指しながら言った。

「オレ達二人だけに結構な人数だな……」

オレの言葉に大佐がクスリと笑った。

「我々は軍事兵器だ。人としてなど見られてはいない」

その声は少しだけ自嘲的で。
こうしてよく見てみると、大佐の軍服はところどころ破けているし、青が赤に染まるほど血が滲んでいた。
その余りにも無残な姿に心が痛んだ。
オレのせいなら、尚更に。

「大佐、オレが前に出る。大佐は怪我が酷いから……あんな銃撃よけられないだろ?」

何故か大佐が少し慌てた。

「いや、私なら大丈夫だ。さっきも言ったとおり……」

「いいから下がれって!」

少し強めに言うと、オレは大佐の返事を待たずに前に出た。
とたんに、オレの前に土煙が上がった。
数メートル先の地面が威嚇するように弾けた。

「援護頼むぜ、大佐」

オレは後ろを振り向くと、できる限り明るく言った。


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