白哉長編

□妖精
2ページ/8ページ



薄明少し前。



一護も起き上がったらしく、発射台前に集まっていた。


『よし、全員揃ったな!』


いろりに抱きかかえられた夜一が言う。


『どうしたんだ?尻尾、よく曲がる歯ブラシみたいになってんぞ?』



『何か文句があるのか…?』

潰されそうになるくらいの威圧感を出す夜一と、その後ろで一護を見据えて静かに微笑むいろり。


『あ、あ、いや…いつもどおりの素敵なお尻尾で…』





『ところで岩鷲のヤツはどうした?』


『アイツなら…』


一護が記憶内に検索をかけようとしたその時。


『ちょっと待ったーー!』


声の方向へ一斉に振り向く。


『はぁ、はぁ…ヒーローは、遅れて登場するもんだぜ!』


『息切れしたヒーローも滅多に見かけないわね』


いろりが冷やかな小声で斬り捨てた。












『岩鷲様専用バトルコスチューム、どうだカッコイイだろ!
泣いて頼んでも貸してやんねーぜザマーミロ!』




ただ、聞こえていなかったらしい。

別にいろりも気にする素振りを見せないので、話題が自然に移った。
いろりはどうでもいい話題が始まると思ったか、袖の中の短刀に無意識に触れた。


『俺の兄ちゃんは死神に殺された!』




『…!』







無意識の動作が、突然意識内を支配する。




よく考えろ…


一護君に井上さん、雨竜君に…あまり面識のないけど、泰虎君。


みんな誰かを護るためだったり助けるためだったり自分の力の意味を確かめるためだったり。
九十九も自分を助けてくれたいろりを護るために尸魂界にきた。
夜一の目的はわからないが、明らかにある。

そして意味もなく岩鷲がついて行く筈がないのだ。










あたしは一体誰のためにここに来た?








そんなこと、





考えちゃいけない。





あたしはあたしに課せられた仕事をするだけ。

他には何も考えてはいけないの。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ