白哉長編
□大切なものに
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翌日目を覚ましたのは、大きな霊圧のぶつかりあいの音だった。
『…これは』
まだ少し眠いが、やるべきことがある。
夜一はゆっくり起き上がった。
息を吐いて霊圧を探る。
『隊長格と一護が戦っているのじゃな。
…死ぬでないぞ』
『あいつがあの程度で死んだなら、その程度の奴だった……それだけではないのか?』
いつの間にか起きていたらしい九十九が隣で言う。
その返答に苛立ったのを隠す為に、夜一は下を向いた。
それだけで会話が終わり、痛い沈黙が通り抜ける。
その沈黙を破ったのは、夜一だった。
『…いろりは記憶を失ってもなお、どこかで白哉のことを愛している。
それに気付いた時、彼女の力も歌声も心も成長するはず。』
また夜一は下を見た。
『一つ、気になることがある。』
なんじゃ、と夜一が視線を上げぬまま、つっけんどんに返す。。
『いろりは、こんな腑抜けた顔をしたお前をみたらどんな顔をするか?
昨日も言ったはず。いつまでも落ち込むな。
…一護の霊圧が消えそうだ。助太刀に行くぞ』
夜一はパッと顔を上げた。
いつも通りの不敵な笑みを湛えて。
『わかっておる!
孅罪宮の入り口に近いところじゃ。
腑抜けた一護を蹴飛ばさねばの』
九十九は何も言わず狐の姿になると隠れ場所を発った。