白哉長編

□大切なものに
6ページ/8ページ



二人が一護の元についた時には、勝負は既についていた。




『すまぬ一護、少し遅れた。
派手にやられたの…』


夜一はそういうと、元の姿に戻り一護を抱えてその場を立ち去った。

































いろりは、頭にちらつく微かな記憶を頼りにして、瀞霊廷内で最も高いところにある懴罪宮を目指して走った。







『…あの男の子は、あたしが歌うことを知ってる』



だから本能が呼ぶ、あの男の子の居場所。
そこに一番近くて且つ瀞霊廷内で一番高いところで自分の居場所を知らせる。
それしかやり方がわからない。
でも、まだあの男の子のことが好きだから。









一護と隊長格の激闘が終わる気配を肌で感じながらただ走る。






『先にはいかせんぞ!』




いろりは盛大な舌打ちをした。
いつの間にか十人近くの死神に囲まれていた。


『貴様は一人、こっちは十人、勝ち目はないぞ!
かかれ!』

こういう時のいろりは、普通冷たい笑みを貼り付けることが多い。
だが今回ばかりは、不機嫌そうな雰囲気を露にしていた。






『こっちは忙しいの。
…退け』






いろりは姿を消した、瞬間一気に五人を白打だけで片付けた。

もう一度四人を同じくして片付け、指示を出していた最後の一人を見据えた。



『あたしの邪魔をするタイミングが悪かった……それだけです』



そういい放つと紅焔の左を取り出し、瞬時に相手の全身を切り刻んだ。



『ふは、ふははははははは!何だその刀は!
斬っても何もない!何もないんだ!』




『うるさいのよ』




その言葉を合図に、相手の全身から真っ赤な炎が舞い上がった。





違う。鮮血が舞っているのだ。



『舞う血が炎に見えるから、紅焔。
冥土の土産にお受け取りください、だ』









倒れていく死神には目もくれず、いろりは先を目指す。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ