白哉長編

□大切なものに
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志波岩鷲が、千本桜の餌食となり、倒れ臥した。



そして、次の標的にと花太郎を見る。


刀を振り上げ、…

『…やれやれ物騒だな。それくらいにしたらどうだい?
…朽木隊長』



『浮竹隊長!』
ルキァが声の主を見て、声をあげる。


『おーす朽木!』

『どういうつもりだ』


『それはこっちのセリフ…』





『『………!!』』



『何だ!明らかに隊長格だぞ!
だが知らない霊圧だ………』




『この感覚はまさか…!』







そこにはまさに、




黒崎一護が立っていた。






『助けに来たぜ』







『あれほど来るなと言ったのに…ボロボロではないか…馬鹿者』



『全くだ。だから後でいくらでも怒鳴られてやるよ。
…あいつを倒した後でな!』


『大層な口を聞くな小僧』



白哉の霊圧が跳ね上がる。




『…あんたを倒して、俺は帰る。
命を捨てに来たわけじゃねえんだ』



『大層な口を』






消えた。







気付いた時には一護に斬りかかっていた。



が、一護はそれを受け止めた。



『見えてるぜ、朽木白哉』



ニヤリと一護が笑い、剣を弾く。


『成程、思った以上に腕を上げたか。
ならば貴様がその力に自惚れる前に見せてやろう。決定的な力の差を……


……散れ』











ビンッ








『貴様は…夜一!』




千本桜の刀身には、夜一の手によって布が巻かれていた。





『久しく見ぬ顔だ。行方を眩ませて百余年…
死んだものとばかり思っていたが』


『幾年経とう、こうして儂は生きておる。
…もちろんいろりもな。おぬし好みに育ったぞ、白哉坊』




いろりの名を出した途端、白哉の表情が動いた。




『ルキア奪還が儂らの目的。
そして儂個人の目的は、おぬしの可愛い嫁を返すこと。』

夜一は続ける。

『いろりを返す前に、まず白哉坊、最初におぬしの記憶を返す必要がある。
その為に儂は個人の目的としてここに来た』



白哉と夜一本人は気付かないが、周りには感じとれた。

夜一は“他人は口を出すな”と無言で主張している。


『いろりの記憶を醒ませられるのは、儂ではなくおぬしじゃ。
………九十九』


いつの間にか背後に立っていた九十九が、何かを白哉の頭に叩き込んだ。






『…っ』



白哉はその場に膝をついた。


『貴様…何を』



『儂の妹はおぬしにやる。
早めに捕まえておいた方が良いぞ、白哉坊。
何しろ儂が育てたのじゃ。美しくなっておる。
狙う男は星の数…くっくっ』


夜一は周囲に放っていた緊張を緩めた。
一護が倒れ込んだままの白哉を見た。



『いろりとどんな関係でも俺は知らねえ!
………ぐっ』



夜一は一護の腹に麻酔を叩き込んで気絶させ、それを抱えた。



『ここからは旅禍一味として話そう。
今から三日。三日でこやつをおぬしより強くする。
それまで暫し休戦じゃ。じゃあの!』


最後に夜一は快活そうに笑い、瞬歩でそこを去った。
九十九もあとに続いた。
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