白哉長編
□冩眞の人
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いろりは、自分の鍛練も終わり、またも退屈していた。
そんな時、ふと懐に違和感を感じた。
『そうだ、白哉にもらったやつ』
懐から引き出したのは、一冊の本。
“八ノ宮家の歴史が記されている。
お前は読む前に姿を消したから読んでいないだろう。読んでおけ”
朽木家の屋敷から去る際、白哉にそう言われて渡されていた。
いろりは近くの段差に座り、それを読み始めた。
要は、こういうことらしい。
八ノ宮家は元々、普通中の普通の家柄で、特に周りに知られていることもない本当に普通の家…の筈だった。
が、あるときから、この家は少々特殊なことになったという。
ある代から後、何かしらの芸術的センスが飛び抜けた者が、次々産まれてきたらしい。
踊りや歌、楽器に絵に創作。
一家は、尸魂界中に名の知れる芸術一族になったという。
そんなある代から、周りの隊長格を凌駕する強力な死神が産まれるようになった。
今までずっとこの家を贔屓にしていた霊王はこれを機に、この家に八ノ宮の姓と四大貴族同等の位と零番隊隊長の座を贈ったそうな。
めでたしめでたし。
『……ってどこがめでたしめでたしよ。
て、成り上がったのが……えっと、二万年前!?
そうか、時間が経ち過ぎてもうそんなの関係なくなっちゃったのね』
一人納得。
『うおーーーい!!』
そこに、やたら品のない大声がいろりを呼んだ。
『終わったか!
さ、どんな卍解を見せてくれるかしらね…腕が鳴るなぁ』
いろりは嬉々として声のほうに向かった。