白哉長編
□黒猫の妹
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『1年3組…?』
その少し幼い声の主は、空座第一高校クラス分け発表の掲示板の前に突っ立っている新入生らしき美少女だ。
やたら周囲からの視線を浴びている。
何故なら………
A『あの子超可愛い!!』
B『それよりあの子の足元』
C『おー何かいるー』
A『ねねねね、猫ーーー!!??』
C『変わってんなー』
そう、黒猫を従えていた。
それで先程から教師、生徒両サイドから変な目で見られていることには幸い気付いていないようである。
『……あの?』
先程の会話をしていた三人組の元に、ふっと少女が現れた。
A『ははははは、はいぃぃ??』
B『どうしたの?』
至って冷静な少年Bが優しく対応した。
『えっとその、1年3組って何処の教室かわかんなくて…案内してくれませんか?』
間近で聞いた声は、彼女の美貌に見事に釣り合った、これまた歌手顔負けの美声だった。
そして先程から周囲の視線を自然と集める理由の一つと思われる大きい血のような赤い瞳がすぅーっと少年Bの目を見つめていた。
少年Bは動じることなくこれまた優しく笑って答えた。
B『ああ、僕たちと同じクラスだね、じゃあ一緒に行こうよ。』
『ありがとう!』
少女が一瞬見せたその朗らかな笑顔が決め手となったのか、今年のミス・空座第一高校(新聞部主催)は昨年までの絶対クイーンに大差をつけて、この美少女が優勝したそうな。ちなみに、2位は井上織姫。
『八ノ宮いろりです。よろしくお願いします。』
B『小島水色だよ。よろしくね、八ノ宮さん。』
『あたしのことはいろりって呼んでくださいな。』
C『こいつすっげえタラシだから気ィ付けとけよ。で、俺は黒崎一護。で、聞きたいんだが、そこの黒猫一体なんだ?』
『ああ、この方はあたしの義姉さま。』
『『義姉?』』
『はい!』
『どういう関係なんだよ…(それよりあの猫こっち睨んでる…)』
いろりは一護を睨む黒猫に気付いたらしい。
『義姉さま、あまり一護君を睨まないでください。悪人ではないのですから』
いろりがそう言うと、黒猫は目を一護から逸らした。そして、いろりの腕の中に飛び込んだ。
意思疎通に抜かりはなさそうだ。
『水色君、一護君』
『ん?(何?)』
『義姉さま…触ってみま『結構です。(なんか怖いし)』
ところでお気付きだろうか。
この段階で一名が忘れ去られていることに。
A『俺を放置して勝手に話進めんじゃねえよぉぃ!』
『いつからいたんです?』
キレる茶髪の少年にしれっといろりは笑う。
その笑みに若干バカにしたような雰囲気を混ぜたことに少年は気付いたらしい。
『猫怖くないもん!』
一護・水色(うわあ駄々こねてる…)
『おい、啓吾、もうちょっと静かにしろよ。猫怯えんだろ。』
そういえばいろりはまだ、このハイテンションな男の名を聞いてなかった。
『えっと、あなたの名前は…?』
『俺浅野啓吾!よろしく☆』
(星いらないって…。)
いろりは突然立ち止まると、教室の札を見た。
『着きましたね。ありがとう、一護君、水色君。…あと啓吾君』
『おいおいおい!いろりちゃん!今俺を忘れてただろ!?完ッッ壁に忘れてただろ?えーい絶対そうだもうきr(ry』
ワンテンポ名前を呼ばれるのが遅かっただけでここまで騒がれてはいろりも迷惑極まりない。
『…義姉さま』
『おぐわぁっ!』
啓吾が悲鳴を挙げた。
黒猫はいろりの腕の中で右の前足を突き出し、丁寧に研がれてある爪を彼に見せていた。
『あまり義姉さまを怒らせないでくださいね?こうなりますから。』
啓吾の頬には4本の赤い傷が。
血も流れていて痛そうだ。
『はい、すんません…』
『わかれば構いません。ね?義姉さま。』
猫はにゃあんと鳴いた。
『教室、入らないんですか?』
思い出したように異色の4人組は1年3組に入っていった。