白哉長編

□死神といふもの
1ページ/3ページ



『黒崎サンが、死神になったみたいッスよ、朽木ルキアの手で。』




『………そうか。おぬしが一番理解しておろうに』


特に関心を示すでもなく、ぼそっと嫌味だけ吐いた夜一の、久しく見る難しい顔に、喜助は逆に関心を引かれた。



『ちょっと、どうしちゃったんスか?夜一サン』




『少し、いろりのことを考えておってな…。
おぬしはあの子の身分を聞いたことがあるか?』




『少なくとも夜一サンの口からはないッスね』



『喜助はあの時、隊長になって長くなかったから知らんか。あの子は…』




『四大貴族の一つ、八ノ宮家の次代当主となる者。』


喜助はしれっと答えた。


『…おぬし知っておったのか?』



『“夜一サンの口からは”聞いてないってだけッスよん』

『ッチ』


夜一の蹴りが顔に決まったところで話は少し進んだ。


『ならば、いろりの婚約者の正体も理解しておるな?』

『ええ。』







『義妹が、霊力譲渡という重罪を犯した…いずれ尸魂界につれ戻される』



『そんなことしたら黒崎サンは絶対助けに行くから、一緒に尸魂界に乗り込もうと。そこで、二人の記憶を覚醒させる。そういうことショ?』


『それだけわかっているならばよいわ。
そこでじゃ。いろりが帰ったところはよいのじゃが、八ノ宮家の新しい主のいろりには、生まれながらにして、零番隊の隊長の位が約束されておるじゃろう。』


『そうだったんスか…だったら…』








『そう、いろりはこの百余年で多くの技を習得したが、それでも始解しかできぬ。
それではまだ、尸魂界に送るのは時期尚早じゃろう。』


『始解程度ではきっと生きていけないッスね…。
卍解を修得させる準備に入りまショ。夜一サン。彼女になら造作ないかもしれない。』







『じゃが…』







『このままだといろりサンは生きていけない。流魂街や、普通の貴族とは生まれが全然違いますから。
期待されて零番隊隊長に就く身ですよ。』


『わかった、近いうちに準備を頼むぞ。
その間に一護じゃな。試しにいろりを死神として接触させてみるか。』

そう呟きながらもまだ少し寂しそうな夜一の横顔に、喜助も可愛い娘との別れが近いことを静かに悟った。





.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ