白哉長編
□過去と未来
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その日いろりは、自宅―浦原商店の自室の布団の上で静かにもう数日で満ちるであろう月を眺めていた。
…
(……霊圧?…こんな細やかなのは、一護君のものじゃないはず…!
…じゃあ誰の霊圧…?それに穿界門の霊圧もだ!)
突然、特定できない程の小ささの霊圧を二つ、感じた。
(喜助さま!喜助さまはまだ起きてる!あの方なら知ってるかもしれない!)
『喜助さまっ!』
『おや?どうしたんスか〜?こんな時間まで起きて…』
『とぼけないでください!あの霊圧は?何の、誰の霊圧です?』
喜助は、時折見せる真剣な表情をした。
『いろりサン。もうすぐ小さな戦いが起こります。朽木ルキアを尸魂界に連れ戻す為に、ね。
アタシはあれの後始末に行くつもりですが、着いてきますか?
そして、その戦いには一切、手を出さないと誓えますか?』
『大丈夫です。喜助さまが一緒なら。』
一緒なら、という言葉。彼女に特別な恋愛感情を持っているというわけでもないのに、心臓が跳ねる。
不思議な子ッス。貴方なら一人でも行けるかもしれないのに、と喜助は笑う。
『…!これは一護君ですね?もう一つは知らない人のようですが。
…もう一人は…』
どこかで覚えが、と言ったところで止められた。
『…これ以上はいいッス。やはり貴方は過去に見た死神の中でもすごい優秀ッスね。
アタシが言わせなかった死神の霊圧。
…いつか、会うことになるでしょう。』
『え?』
『黒崎サンの霊圧が消えたみたいッスね。そろそろ行きますよ。支度を。』
『あたしが持っていくものなんてないでしょう?
それより喜助さま。雨降ってます。傘。』
『あ、ホントッス。ありがとうございます。』
『どういたしまして。行きましょう、喜助さま』
下駄帽子と女子高生は、雨降りの中、そこに向かった。
『ルキアさん、いなくなりましたね…。』
『彼女、貴方の大事な友達でしたね、そういえば。』
喜助は、悲しげないろりの顔を見てそう言った。
『大丈夫ッス。黒崎サン達は、尸魂界に朽木サンを救出しに行きます。』
『こんな血みどろで、ですか?』
いろりは、目の前に倒れているオレンジ頭を見て言った。
しかし、喜助は『問題ないッス。』というだけだ。
『はぁ。』
『で、いろりサンは、夜一サンと一緒に尸魂界に行ってもらいたいんスよ。』
いろりの顔は、驚いていた。
『あたしが行ってもいいんですか?義姉さまと。』
『最近、あの人と一緒に出かけてないでしょ?
戦いの中にはなりますけど、少しは一緒の時間を過ごしてみては?ってことッスよ。』