立海
□Sweet(甘)
3ページ/5ページ
「準備物は持って来ましたね?それでは、各自始めてください」
先生の言葉で、調理実習がスタートした。
実習は2人以上の自由なグループ単位で行う。
だから私は、友達*名前と2人で作ることにした。
「じゃあ、始めよっか?」
「うん!」
作るメニューは、クッキー。
もうあれだよね、クッキーと言えば。
彼女が彼氏にプレゼントするお菓子の王道ではないか!
「最初は生地作ろうか。名前は見ててもいいよ?」
「いえ、やります!」
「ほんっとに大丈夫?」
「勿論!」
「…じゃぁ、一緒にやろうか」
いつもは見ていることが多かった私だけど、
今日は積極的に参加した。
生地を作って、型を抜いて、丸めて。
作ってる途中、ブン太の顔を思い浮かべながら。
料理って楽しいじゃないか!?
ついに全てを丸め終わって、何だかそう感じた。
「じゃぁ、あとはオーブンに入れて焼くだけ。それは名前、出来るよね?」
「勿論!任せてっ」
焼きあがれば、ついに完成だ。
私はわくわくしながら、クッキーをオーブンに入れた。
*****
「名前!クッキーは!?」
「へ?」
「オーブンから出した?」
「わっ、忘れてた!」
「ちょっ、もうとっくに焼きあがってるよ!?」
「ごめんっ、今取り出してくる!」
「バカー!!!」
私と友達*名前の間でそんな会話が交わされたのは、クッキーをオーブンに入れて、かなりの時間が経った頃だった。
*****
「それでは、今日の授業はこれでおしまい。ご苦労様でした」
家庭科の授業が、終わった。
私も、終わった。
手にはキレイにラッピングしたクッキー。
でも、中身は最悪。
真っ黒こげ。
「はあ…」
「名前、次があるよ」
本日何度目かのため息をついた私に、友達*名前はそう言ってくれた。
「でも…」
「丸井くんも、きっと喜んでくれるって」
「こんな黒こげ?」
「う…うんっ、き、きっと喜んでくれるよ!」
「はあ…」
これじゃ、ブン太に合わせる顔がない。
だけど昼食中…私の携帯には、ブン太からのメールが入った。
《今日調理実習あったんだろい?楽しみにしてる!》
…こりゃ、やっぱり行かなきゃマズい。
お弁当を食べ終わってから、私は意を決して、ブン太のもとへ向かった。
.