短編 -other-

□君だけにある輝き(白石/ほのぼの)
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 放課後になるまで



 沈んだ気持ちは元には戻らなかった。














「名前」










 ボーッとしてテニス部の活動が終わるのを教室で待っていると

 不意に耳元で、聞きなれた声がした。




「白、石・・・」








 私とした事が。全く気がつかなかった。








「部活終わったの?」

「ああ。それより・・・どないしたん?」

「え?」

「何か悩み事でもあるんやろ?」

「・・・」






 あー、やっぱり顔に出てたか・・・


 白石には通じないだろうと思いながらも、にっこり笑って言ってみる。







「何でもないよ」

「嘘や」




 ・・・やっぱり。








「俺で良かったら話してくれへん?相談乗るし」



 優しい声、優しい顔。

 私の、大好きな。


 でも―――・・・





「・・・ッ」

「名前!?」









 気付けば私の頬を、涙が伝っていた。


 白石の表情が、驚いたようなものになる。




「ご、め・・・」



 ・・・嫌だ、白石の前で泣くなんて。

 大げさだ、私。


 でもそう思って止めようとしても、涙は止まってくれなかった。








「名前・・・話してくれへん?」

「・・・」







 もうここまで来て“何でもない”は通用しない。


 そう悟って、私は口を開いた。




「白石にね・・・私は合わないと思う」

「・・・何で?」


 ゆっくりと、白石が問う。



「白石は、完璧ですごくいい人だもん。私にはもったいないよ。

 私、全然勉強もついていけてない。

 それは私の努力不足だって分かってる。でも・・・

 白石には、真下さんの方が似合ってるよ・・・」


「名前・・・」


「会える時間も、私なんかより吉乃ちゃんの方がずっと多い。

 ほとんど会えないし、勉強も運動も出来ないし・・・

 私が白石に釣り合ってるなんて、到底思えな・・・!!」






 その後は、続けられなかった。















 白石に、抱きしめられたから。




























「し、らいし・・・」

「名前はアホや!」

「へ?」

「アホって言うたんや。何も分かってへん」

「何で・・・」

「俺は、名前を選んだんやで。名前といる時間が、一番楽しいんや」

「嘘」

「嘘やない。名前・・・名前にはな、真下さんや吉乃さんにはない、名前だけが持っとる事もあるんや」

「え・・・?」

「名前と話してると嘘みたいに疲れがとれるし、元気になんねん。

 名前の顔見るとホッとする。他の人見ても、何とも思わへんのに」







 白石の声がすぐ近くで聞こえて







「名前・・・俺はな、名前が・・・名前だけが、好きなんや」











 頬に熱が集中した。



















「他の人何かどうでもいいんや。名前には名前だけの輝きがある。

 俺は、それが好きなんや」


「白石・・・」










 それから私は、声をあげて子供みたいに泣いた。









 ずっとずっと、不安だった。














 完璧すぎる白石と、平平凡凡な自分。












 どうしても、釣り合ってるように思えなくて。




































 だけど白石は、言ってくれた。







 前みたいに




























 “好き”

























 って。











































 私だけの輝きって、何なんだろ。




 まだ、分かんない。


 だけど・・・






























「それに俺はな、別に完璧なんかやないねん」

「えっ!?嘘だぁ」

「だって現に今も・・・名前んとこ泣かせてしもうた。

 別れる事になったらどないしよ思うて、めっちゃ焦ったんやで?」

「・・・そう、なんだ」





















 白石と一緒なら

































 いつか、見つけられそうな気がしたんだ。


























































「白石、大好きだよ」

「俺の方が名前んとこ好きやし!これは絶対負けへんで!」










 君だけにある輝き








END
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