氷帝

□居場所-前編-(シリアス)
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「気持ち良いC〜・・・」














 あったかい日差し、ほどよく吹く風・・・こんな日は、ものすごく眠くなる。

 昼休み―――――俺は今、現実と夢の境目をさまよっていた。

























 そんな時だった。


























【ガッ】













 俺の足に何かが勢いよくぶつかった。

























 人だった。


 その人は俺の足につまずいて、思いっきり転んだ。

























「ちょっと君、大丈夫!?」

「あ、ごめんなさい・・・」

「あれっ、名前ちゃん!?」

「ジロー先輩・・・」

























 その人が俺の知っている人物だと分かって、思わず声のトーンが上がる。


























 名字名前―――俺たち氷帝テニス部のマネージャーだった。


 まだ2年生だけど、仕事もテキパキこなしてくれて、みんなからかなり信頼されている。


 でも今日の名前ちゃんは、何か変だ。

 全然こっちを見ようとしない。

























「どーしたの?そっち向いちゃって。こっち向いたらー?」

「・・・」

「おーい、聞いてる?こっち向きなよー」

「いえ、もう行きますんで」

「ちょっとー」

「・・・」












 う・・・ここまでかたくなに無視されるとこっちもムキになる。





 俺は名前ちゃんの肩を掴んだ。

 びっくりした名前ちゃんは、こっちを見る。




 ヘヘ、俺の勝ち。

























 でも次の瞬間、俺は名前ちゃんよりもびっくりした。
































































 ・・・名前ちゃんが、泣いてたからだ。

























「ちょっ、名前ちゃん!?」

























 まずい、という表情をして、名前ちゃんはあわててごしごしと涙を拭いた。

 その目が、真っ赤になってる。

























「どーしたの・・・」

「何でもないです」

「でも今、泣いて・・・」

「ジロー先輩」

「ん?」

「テニス部のみんなには、黙っててもらえますか?」

「何で!?」

「・・・余計な事考えさせたくないんで」

「え、でも・・・」

「それじゃ」












 それだけ言って、名前ちゃんは行ってしまった。
















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