氷帝

□居場所-後編-(シリアス甘)
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 部活へ行くために体育館を通りかかると、声がした。見ると、卓球部の男子だった。








『テニス部、全国行き決めたらしいぜ』

『俺、テニス部嫌い』

『俺も』


























 心臓が跳ねるのが分かった。







 “嫌い”―――テニス部にこんな気持ちを持った人がいるなんて、初めて知った。

 跡部先輩は女子からも男子からも人気だし・・・他の皆もそう。




 とにかくテニス部を嫌っている人がいるなんて、思いもしなかった。






 そこで足を止めて、会話を聞くことにした。



























『どーせ跡部とかってのが裏で何かやってんじゃねーのか?』

『アイツ、金持ちって噂だしな。テニス協会に、金でも出してんのかもな』

『宍戸ってのも気にくわねーぜ。1回レギュラー落ちたんだろ?

 ここの方針じゃもう入れねぇ筈なのに、またレギュラーになってやがる。絶対コネ使ってなったんだろうぜ』

『うわっ、卑怯だな〜』

『そうそう、鳳ってのもよ〜』



























 それからテニス部のレギュラーに対する悪口は、永遠に続いた。




 そして・・・









 我慢して聞いていた私の耳に、1人の男子の一言が鋭く突き刺さった。




























『あいつら全員、全国で恥かけばいーのに』




























 もう我慢できなかった。



























『ちょっと、あんたたち!』







 私はそこから飛び出して、卓球部の男子に掴みかかっていた。



 でもとうてい勝てるはずもなくて・・・


 私はすぐに、壁に押し付けられた。







『痛・・・』

『てめぇ・・・俺たちに逆らって、いいと思ってんのか?』

『いいもなにも、テニス部の事、悪く言わないでよ!』

『覚悟しとけよ』



























 それからだった。








 卓球部男子からの、私に対する嫌がらせ。


























 次の日、囲まれた私は、1人の男子にペンダントを引きちぎられた。





 そいつはそのペンダントを地面に落とすと、思い切り踏みつける。


 ガラス細工のそれは、すぐ粉々になった。

 ・・・死んだ祖母の形見だった。

 無残な姿になってしまったペンダントを見たとき、涙が止まらなかった。


 その時、ジロー先輩にぶつかったんだ。







 階段からも突き落とされた。

 とっさに顔を手で守ったけど、手にはたくさんの傷跡が残ってしまった。


























 そしてついさっき、電話が来た。


 屋上に来い。

 来ないとテニス部を潰す。








 卓球部男子の一人、富沢 大樹は、親が学校に多額の寄付金を出してるらしい。

 だから、テニス部をなくせと言えば簡単にそうできるんだって、言ってた。



 そんな奴に、テニス部を潰させるわけにはいかない。





 そう思いながら、私は懸命に走った。






















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