立海

□for you(ほのぼの)
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「ねえ、名前!名前がかっこ良いなって思う人誰?」

「…いない」

「嘘だあ!一人くらいいるでしょ?」

「いない」



時は朝、場所はテニスコートのフェンスの外。

友達の友達*名前の質問に二度同じ答えを返せば、友達*名前はぷーっと頬を膨らます。



「せっかく恵まれた環境なのにー」

「だって、いないものはいないんだもん」



目の前には、必死に練習メニューをこなしている立海テニス部のレギュラー陣たち。

そしてフェンスの外…今私と友達*名前が居るところには、私たちを含め大勢の女子。

ここ立海附属中のテニス部は女子からの人気が著しく高く、

朝っぱらだというのにも関わらずこうしてギャラリー…いわゆるファンの皆が集まる。

よくもまあ毎日毎日お暇なもんで。


かくいう私もファンの一人…ではない。断じてない。

ファンなのは、私の隣で目をきらきら輝かせている友達*名前の方だ。

私は単に「一人じゃ寂しいから」なんて理由で、毎朝テニス部の応援に駆り出されているだけ。

まあ、どうせ学校には早く行きたいタイプだし暇だから良いんだけどね。




そうこうしていると、練習を終えたらしいテニス部員たちがコートから出てきた。

同時に湧きおこるきゃーっという歓声。部員たちに群がる女子。

毎朝毎朝同じ事してるけど…疲れないのかなあ、あの女子たち。




「やあ、友達*名字さん」



そんな事を考えていると、不意に近くで友達*名前の名前を呼ぶ声がした。



「あっ、幸村くん!」



それに笑顔で応える友達*名前。

見れば私と友達*名前の背後には、立海レギュラー陣が勢揃いしていた。



「また見に来てくれていたんだね」

「勿論!練習お疲れ様」

「ありがとう友達*名字さん」



友達*名前とレギュラー達が話し始めたのを皮切りに、私はそそくさとその場を後にする。



友達*名前はさっき話してた人…部長の幸村くん?と小さいころから面識があったらしく、そのせいもあってレギュラーの皆とも仲が良い。

だから彼女曰く、他の女子のファン達より一歩も二歩もリードしてるとか。

で、私も友達*名前から「レギュラーの皆に紹介してあげるよ!」なんて言われてるんだけど…断り続けて現在に至る。

確かに友達*名前が言うように、他の女子からしてみたら"恵まれた環境"なんだろう。

友達*名前に頼めば、話せる訳だし。

だけど今まで男子と全く縁のなかった私にとっては…あまり魅力的には感じないんだよなあ。

第一、男子と話すなんてなんか恥ずかしいし。





教室に戻りながら、私はポケットから"ある物"を取り出す。

それは猫をかたどった、私の大好きなキャラクターの小さなマスコット。

何を隠そう私の宝物である。

昔はこれのアニメがテレビでやってて小さい頃大好きだったんだけど…

今はアニメ放送も終わって、同時にそれまでいっぱい売ってたグッズもめっきり見なくなっちゃったんだよね。

だから、このマスコットは今では手に入らない超レア物なのだ!



「私にはお前さえいれば十分だよ」



悲しい事言ってるのは自分でも分かってるけど…男子と話すより、こっちの方がいいもん。

この子の顔見てると、なんか安心するし。


しばらくマスコットを見て満足した私は、それを再びポケットに閉まって歩き続ける。






このキャラクターが、あんな事件を巻き起こすとも知らずに―…




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