立海

□お菓子の王女様(甘)
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次の日、



「おーじょっさまー!!」



いつも通りのブン太の声に、自然に笑みが零れる。





「はいはい、今日は何が…!」

「どーした?」





心配そうなブン太の声が耳に入らない程、私は頭の中が真っ白になった。

ない!…いつもお菓子を入れてるバッグが、ない…

そう言えば、今日の朝は寝坊しちゃってかなりばたばたと準備した。

きっと家の机の上に忘れてきたんだ。

せっかくガムも補充したのに…



心の中で私は、がっくり膝をつく。

これじゃあもう今日の会話はおしまいだ。

お菓子を持ってない私になんて、ブン太は興味ないんだから。





「ごめん、忘れちゃったみたい」

「マジで!?」

「うん。準備したつもりだったんだけど、うっかり」

「なんだよー楽しみにしてたのに」

「ごめん」

「んじゃ、ほらよっ」

「へっ?」



次の瞬間、コロンと私の手に載せられたのはピンクの包み紙のキャンディー。



「えと、これは…」

「いつものお礼。俺ばっかもらってるからな。ほら、食えよ!」

「あり、がと…」



ブン太から飴貰えるなんて、素直に嬉しい…けど、あれ?

同時に思い浮かぶ疑問。

キャンディー持ってたなら、何でブン太は毎日毎日私に…



不思議に思ってブン太を見れば、一瞬視線がぶつかってすぐにブン太はうつむいた。





「えーと、あのさ…」

「?」

「俺、さ。ホントはお菓子なんてどーでもいいの。いやっ!お菓子は大事なんだけど!

名前のくれるお菓子はいっつもうまいんだけど!」

「ブン太…?」

「ほんとは!お前と話、したかったから…」





一瞬の出来事に、思考がついていかない。





嘘…そんな、嘘でしょ…

夢でも見てるんじゃないかとべたに頬をつねるけど、鋭い痛みを感じるだけで。

…夢じゃない。

ブン太も私と同じだった…!?



「私、も…」

「え?」

「お菓子持ってきてたのだって、本当はブン太と話したいからだったし…」





「それマジで?」

「うん」






ガバッ





「うわっ」



ブン太は数秒驚いた表情を貼りつけていたかと思うと、いきなり抱きついてきた。

ずっしりと体にかかる重みと共に、恥ずかしさが込み上げてくる。



「ちょっ、ここ教室…!」



急いでブン太を引きはがして周りを見れば…

私の席が一番後ろだった事が幸いして、誰にも見られずに済んだ。

セーフ。





「悪い悪い、ついな」

「もう…」

「じゃあ俺ら、同じだったんだな!」

「そうなるね…びっくり」

「名前、大好きだぜ!」

「…わ、私もっ…」










これでお菓子の王女様も終わりかな、なんて思ったけど…



「あ、でも名前、お菓子は毎日俺にくれよ?」

「何で!?目的はもう果たしたじゃん」

「俺は名前のくれたお菓子が食いたいのっ!」

「ッ…」



私の王女様生活は、まだまだ続きそうです。



今度は手作りにしてあげようかな…なんて思う今日この頃。
















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私が初めて書いた短編です。

pepsさんでサイト運営してた時代の小説。

中3の冬に書きました。

2014年2月18日文章修正しました。



(2010/12/21⇒2014/02/18修正 雪野沙羅)

Fin.




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