立海

□バレンタインデー(甘/2011VD記念)
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 2月14日――――



 今日は、乙女がみんなときめくバレンタインデーだ。

 いつも、そんな女子の姿を馬鹿みたい・・・なんて眺めてる私。

 でも、今日は例外じゃなかったり・・・

 今日、私は初めて“手作り”のお菓子を作った。

 渡す相手は・・・




 ―――――丸井 ブン太



 私のクラス、3年B組のアイドルだ。

 仁王とブン太は男子テニス部で、人気絶大。

 こんなの渡したって、見向きもされないって、分かってる。

 女子からもらう大量のチョコの1つにしかならないってことも。


 だけど・・・渡したかったんだ。



 ブン太とは、それほど仲が良いってわけでもない。

 けど、悪いってわけでもない。

 決定的な他の女子との違いは・・・



 席が、隣同士だってこと。


 くじ引きで、偶然なった席。

 席替えしたてのころはあまり嬉しくもなかったけど・・・

 過ごしていくうちに、ブン太の良い所、いっぱい知った。

 思ったよりも繊細だったり、優しかったり、大人だったり。

 そうしていくうちに、惹かれたんだろうね、きっと――――







「おはよ」

「はよ」


 教室に行けば、もう隣の席にはブン太が座っていた。

 そして・・・机の上には、山々のチョコレートたち。

 なんか・・・渡す前から渡す気なくすな・・・


 ってかどんだけもらってるんだよ、君は。



「すごいね」

 チョコを指さしてそう言ってみれば

「天才的だろぃ?」

 なんて。


「名前はねーの?」

「は?」

「“は?”って・・・チョコに決まってんだろぃ!」

「あーチョコ・・・」


 ガサゴソとバッグを探って、無造作にチョコをブン太の前に突き出す。

「はい」

「おっ、サンキュー」

「何か他の女子のより見劣りしてるし・・・嫌なら、食べなくていいから」


 何か、自分が嫌になる。

 本当は食べて欲しいのに・・・なんでこんなに冷たく言っちゃうんだろ。

 当のブン太はというと、数秒間ポカンと私を見つめた。

 かと思うと、ニッと笑った。


「俺、名前のが一番良い」

「えっ!?」



「だって、好きな奴の・・・だし」

「ブン、太・・・!?」





 バレンタインの日。



 私に、幸せが訪れた。

 今年から、バレンタインデーは・・・



 私とブン太の、大切な行事になるね。






END

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