立海

□幼馴染(切甘)
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幼なじみ――――














 この立場に、甘えていたかった。












































 私は男子テニス部の幸村精市と、幼なじみ。


 ちなみに、クラスも一緒。

 家が隣同士のせいで、昔からよく一緒に遊んでだ。

 その名残で、今も一緒に登校してる。






 精市は男子テニス部に入ってから、女子の人気がものすごく出た。

 だけど私との“幼なじみ”って関係は相変わらずで、前と同じようにしゃべってた。

 帰りも、私はマネージャーではないけど、コートでタオル配ったりして、テニス部のみんなと帰ってた。
































 そんなある日の事だった。






「名字さん」






 朝、私が環境委員会の仕事で、1人で花に水をやっていると、2人の女の子に名前を呼ばれた。

 顔も知らない子。

 でも名札を見ると学年は一緒みたいだから、おそらくクラスがはなれてるんだろう。





「何?」

「幸村くんと幼なじみなんだってね」

「え?」




 急に言われてびっくりした。

 でも本当のことだから、軽く頷く。






「そう、だけど?」

「ふーん。それってさ、ずるくない?」

「え?」

「幼なじみって立場利用して、幸村くんにひっついてるわけだ」

「ひっついてるなんて、私そんな・・・」

「実際そうじゃない!幼なじみって立場がなければ、あんたは幸村くんから見向きもされないのにさ」

「私たちがどんなに話しかけても、幸村くんは微笑む程度なのに・・・あんたとは楽しそうにしゃべってる!」

「幼なじみってだけでね」

「・・・」
















 彼女たちの言葉が、胸に突き刺さった。







 1人でいるときにこんな言葉を浴びせかけられて・・・




 確かにそれにもびっくりした。

 だけどそんなことよりも驚いたこと。

 ・・・私は、気づかされてしまったんだ。







 

 精市は、私が“幼なじみ”だから・・・

 一緒にいてくれるってことに。
















 幼なじみ―――――いままで深く考えた事もなかった。

 精市が隣にいるのが、当たり前だと思ってた。



 でも私が精市の幼なじみになったのは単なる偶然で・・・

 精市の隣が私じゃなくて、他の子だったことだってありえるんだ。

 確かに私が幼なじみじゃなかったら・・・精市とはただのクラスメイト。

 おそらく、一言も話さないんだろう。








「ちょっと、何とか言ったらどうなのよ!」

「・・・」

「まったく、金輪際幸村くんには近づかないで欲しいわねっ!」

「ホント、ずるいんだから・・・」




 私が黙っていると、2人の女の子は行ってしまった。
















 私は急に花に水をやる気がなくなって、そのまま教室に戻った。


















 教室でも、ずっと考えっぱなしだった。

 今朝、女の子に言われた事。


 それが、顔に出てたのかも・・・
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