立海

□好きだよ。(切甘)
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T 戸惑う心







Story☆1   Side★Akaya




















 朝、目覚ましが鳴って、目が覚める。





 いつもと同じようで、違う朝。

 それは、今日が9月25日だから。






 9月25日・・・そう、俺の誕生日。


 誕生日というだけで無駄に上がるテンション。

 珍しく、目覚ましで設定した時間通りに起きることに成功した。































 朝の支度をしてから、いつもより1本早いバスで立海大付属中学校へ向う。


 まぁ、誕生日なんて関係なしに朝練はあるけど。










「あ〜、赤也くんだぁっ!」

「赤也くん、ハッピーバースデー☆☆」










 校門を入った瞬間にこうやって話しかけてくるのは、

 俺が名前を教えた記憶もないような女子たち。

 どいつもこいつも俺たちテニス部の顔目当て――――――――



 おめでとう、と言われれば、悪い気がしないのが普通だろう。



 でも、俺は違う。

 こんな顔だけしか見てないような奴等、こっちから願い下げだ。

 だけど俺のそんな意志とは裏腹に、手にはどんどんプレゼントが増えていく。




















 なんとか女子たちを振り切ってテニスコートへ向かった。

 俺の手には、数十個のプレゼント。









 ・・・この短時間にこの量はねぇだろ。










「赤也、はよー」







 そう挨拶してきたのは丸井先輩だ。





「何赤也、モテモテじゃ〜ん♪」

「こんなの貰ったところで嬉しくないっスよ」

「冷てー奴」

「なんなら丸井先輩貰いますか?あげますよ」

「いらねっつの。ま、赤也が眼中にある女子なんてアイツだけか〜」

「ちょっ、丸井先輩!」










 いきなり“あの人”の話題になって、俺は傍目から分かるほど動揺した。



 ・・・ッ、やっぱり自分のこういうところ、嫌だ。

 丸井先輩、けっこー見た目より勘が鋭い。


 今ので、分かっちゃうんだろうな・・・









「赤也、照れてんのかよー??」









 ほら、やっぱり・・・





 “そんなことないっス!”っていいながら丸井先輩を叩けば

 丸井先輩は大げさに悲鳴を上げる。





「赤也に殺される〜」

「丸井先輩っ!大げさっスよ!」










 その時だった――――――




















「あ・・・れ?赤也!?」




















 背後で急に、透き通った声が聞こえた。





 この声・・・顔見なくたって分かる。もう、何度も聞いた声だから。











 俺が振り向けば、そこには予想通り、“あの人”の姿。








「おっ、名前じゃ〜ん!はよ」

「おはよ、ブン太!それに、赤也も!」

「っス」










 あの人・・・それは、俺たち男子テニス部のマネージャー、名前先輩のこと。










 名前先輩は3年B組で、丸井先輩や仁王先輩と同じクラスだ。


 俺がテニス部に入部する頃から、名前先輩はマネージャーやってて





 ちょっと・・・いや、かなり荒れてた当時の俺に、優しく声かけてくれた。

 それからだ。

 俺がよく、この人を目で追うようになったのは・・・











「赤也、すごいプレゼント」


 名前先輩は俺の手にかかえられたプレゼントを見ながら、くすりと笑う。









 その瞬間、俺の胸がちくりと痛んだ。










 何で・・・


 そんなこと、知らねぇ。



 けどなんか・・・

 名前先輩が俺にプレゼントを渡す女子たちを認めたっつーか・・・

 なんとなく、やりきれない気分だった。










「赤也??」






 黙った俺を心配して、名前先輩が声をかけてくる。






「どーしたの?急に黙っちゃって・・・」

「いやっ、何でもないっスよ!今日珍しく早起きしたんで、眠くて・・・」

「そっか!赤也がこの時間に朝練に来てるなんて、本当に珍しいよね!!」

「そっスね」

「赤也・・・」









 急に名前先輩の声のトーンが落ちた。









「何スか?」

「えっ、と・・・ね・・・」

「練習始めるよー」




















 名前先輩の声を遮ったのは、爽やかな幸村部長の声。









 ・・・俺がこんなにも幸村部長を恨めしく思ったのは

 後にも先にも1度きりだろう。




















「あっ、部活始めるって!んじゃ、がんばって」




 名前先輩は何事もなかったかのように去って行ってしまった。




















 名前先輩、アンタ、一体何が言いたかったんだよ・・・









 気になるじゃないっスか・・・










 俺はやりきれない気持ちのまま、部活へとのぞんだ。




















To be continued...

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