短編 -other-

□努力(菊丸/切甘)
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「もう・・・英二なんて知らないっ!!」












 私のそんな声が響いたのは・・・

 ある日の放課後のことだった。












 2年と少し前――――






 ここ、青春学園に入学した時から、私と英二は同じクラスだった。

 英二はすごく明るくて・・・

 私たちが仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。









 そんなある日、英二は私に言ったんだ。







“名前・・・できれば、付き合ってほしい”






 私も、ずっとずっと、同じ気持ちだった。

 だから




“私も”







 正直に気持ちを伝えて―――

 私と英二は、付き合うことになった。










 それからは、楽しい日々が過ぎた。

 どっちも明るい性格なもんだから、毎日笑いが絶えなくて。














 だけど最近・・・

 今日みたいな事が、多くなった。

 理由は――――――英二の部活。






 英二は、男子テニス部に所属している。

 青春学園は全国まで行ったこともあって、テニス部に力を入れている。


 そのせいもあって、帰宅部の私と英二は、会う時間がめっきり減った。

 中3になった今、その時間はもっと少なくなってしまって・・・









「英二は、私よりもテニス部が大切なんだ?」

「そういう訳じゃないってば!」

「絶対そうだよ!」

「違う!」

「違くない!」



 そんな会話が、多くなった。







 今日英二と喧嘩した原因も、いつもと同じ事だった。




 今週の土曜日は珍しく英二の部活がなくて、2人で遊ぶ予定を入れてた。

 でも前日の今日になって、部活があるからってドタキャン。

 突然予定が入ったらしい。










「もう・・・英二なんて知らないっ!!」




 それで思わず出てきてしまった言葉がソレ。








「やっぱり英二は、私の事どうでもいいんでしょ!」

「違うって!」

「何よ・・・いっつもいっつも試合では勝ってるじゃん!
 1日くらい練習しなくても・・・」

「名前、聞いてよ!」

「もうやだっ・・・英二なんて嫌いだもん!」

「む〜〜〜・・・俺だって名前なんか大っ嫌いだよーっ!」

「・・・!!・・・英二の馬鹿!!」







 カッと頭に血が昇って・・・

 私はそう叫んで、向きを変えてその場を立ち去った。

 後ろで名前を呼ぶ声が聞こえたけど・・・



 そんなのもう、知らない。













 走って、走って、走って・・・






「もう英二なんて・・・」

 知らない。


 いいよ、英二なんて・・・テニスやってればいいんだ!

 本当は私なんて、必要なかったんだから。




































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