短編 -other-

□君だけにある輝き(白石/ほのぼの)
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 委員会の仕事が終わって、教室の窓から何気なくテニスコートを見る。




 そしたら、丁度白石と同じクラスの謙也くんが打ち合いをしているところだった。





 長いラリー。




 お互い1歩も引いてない。




 気付けば、私は食い入るようにそのラリーを見つめていた。

 白石、頑張って。

 お願い―――・・・




 そう思った瞬間に、白石のスマッシュがコーナーぎりぎりに決まった。







「やった!」






「なーに見とんねん、名前」

「ひゃっ!」




 人知れずガッツポーズをしたのとほぼ同時位に背後から声が聞こえてきて、

 驚いて思わず肩をすくめてしまった。




「び、びっくりしたぁ・・・」

「さっき名前呼んだんやで?ま、“誰かさん”に夢中やったけどなぁ」


 声の主は、一番の親友の菜々。


 

「そんなことないって・・・」

「隠しても無駄や!“やった!”って声出てたし」

「うっ・・・」




 まさか、聞かれていたとは。




 菜々も私の隣に来て、ちらりとテニスコートを眺める。








「あ」

「ん?どうしたの?」

「あー・・・」

「何・・・あー・・・」


 菜々につられて再びテニスコートに視線を移した私は、

 菜々と似たような反応をしてしまった。






 さっきので打ち合いは終わりだったようで、

 白石と謙也は話しながらベンチの方に歩いて行ってる。


 そこに笑顔で駆け寄って、タオルとドリンクを渡している少女――――・・・







 ・・・――――マネージャーの、大橋 吉乃ちゃん。


 






 その光景を見た瞬間、チクリ・・・と胸が痛んだ。






 朝、昼休み、放課後、休日。

 テニス部は、とにかく練習がたくさんある。


 その練習全てにマネージャーの吉乃ちゃんも参加する。


 だから、実質私よりも、吉乃ちゃんといる時間の方が長いんだ、よね。











「名前、大丈夫なん・・・?」


 心配そうに、私を見る菜々。

 ・・・っと、いけないいけない。


「だーいじょぶだって!席戻ろっか」




 私は明るく言って、菜々に笑いかけた。


 ・・・吉乃ちゃんの事は考えないって、決めてるんだ。

 確かにこうやって吉乃ちゃんと白石が仲良くしてるの見ると、モヤッとする。

 だけど・・・



“好きなんや・・・名前が一番”



 白石は、そう言ってくれたから。

 だから私は、大好きな白石の言葉を信用するって。


 マネージャーと選手がいつも一緒にいるのは、仕方ない事だしね。














 そうこうしているうちに朝練が終わって白石も戻ってきて。



「さっき見ててくれたやろ?謙也とのラリーの時。

 名前のおかげでめっちゃ力出たで」



 そう言ってもらえて、さっきのモヤモヤなんて、すぐに吹き飛んでしまった。



 そう、“その時”は。


























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