妄想小説 短編

□一方通行
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香は時々ふと悲しい顔をすることがあった。

誰も見ていないとき、そんな顔をする。

そして、その視線の先にはいつも幽助が居た。

だから香は悲しい顔をするんだと知った。

今日も香は幽助と螢子ちゃんのやり取りを見て、表情を少し曇らせた。
幽助が香の変化に初めて気付く。

「香?お前調子悪いのか?」
そう言って、香の額に手を当てる。
瞬間、香の顔が真っ赤になる。

皆、顔が赤いのを熱のせいではないかと思っていたようだ。

「熱があるんじゃない?」
「帰るか?送ってくぞ?」

皆の言葉に香は笑顔で返す。

「大丈夫だよ!ちょっと寝不足だったからかな?
今日は帰るよ、ごめんね。」


理由を知る俺には香の笑顔が痛々しかった。

「俺も帰るから、送るよ」
香はひとりで大丈夫と言うが、皆に叱られ渋々納得した。


帰り際。
「蔵馬、襲うんじゃねーぞー!」
幽助の軽口に、香の顔がまた悲しい表情になった。

それを見て、俺もまた。
悲しくなった。
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