妄想小説 短編

□サキヨミ
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帰り道、南野くんの横を歩いていることに改めてどきどきし始めた。
学校のいわばアイドル的存在に送ってもらうなんて。

本気で誰にも見られないようにと祈った。


そんな私に気がついたのか、南野くんが笑って聞いた。

「どうしたの?」


この笑顔が皆を魅了するんだなあ…。

「んー…、誰かに見られたら困るなーと」


「どうして?」


「恨まれちゃう」


きょとんとしてるので丁寧に教えてあげた。


「ははっ。まさか。俺はそんなにモテないですよ」


「わかってないなー」

そう言ってタメ息をつくと、南野くんは笑った。

「河嶋さんだってわかってないじゃないですか」

「え?」


「たぶん、俺の方が恨まれますよ」


「…誰に?」


「ふふっ。本当にわかってないですね」



そう言ったきり教えてくれなかった。
何言ってんだか。
私なんて入学してから男の子と話したことなんて数えるくらいしかないっつーの。




「送ってくれてありがと」

家の前で南野くんにお礼を言う。

「いいえ。じゃあ、また明日」

そう言って南野くんは帰っていった。
なんか今日は不思議な1日だったな。
まさかあの南野くんの家にお邪魔したり、秘密を話したり、送ってもらったり。
仲良くなれたみたいでちょっと嬉しい。


そう思いながら、玄関を開ける。

「ただいまー」

するとママが電話を中断させた。

「香、あんたマキちゃんと遊んでた?」

「?遊んでないよ」

「マキちゃん、今日ピアノのレッスンなのに帰ってこないらしいのよ」


ママがまた電話に戻る。

「ええ、娘は会ってないみたい。…ちょっと待ってね」

「香、ちょっとマキちゃんのママと話してくれる?」

そう言って受話器を渡してきた。

「電話代わりました。マキ連絡ないんですか?」

マキのママはすごく心配してるようだった。
確かにマキがピアノをさぼるなんて初めてかもしれない。
だけど、今日は好きな男に告白するとか言ってたし、そのままデートしてたって不思議じゃない。

「香ちゃん、マキの居場所に心当たりない?あの子がレッスン休むなんてことなかったし、連絡もないから心配で」


こんな心配してる人に、まさかデートしてるかもとはちょっと言いにくい。


「約束があるとは言ってたけど、相手とか場所はわかりません…。私も他の友達に聞いてみます」


もう外は暗いとはいえ、まだ7時半だし、すぐ帰ってくるだろう。
そう思っていた。

電話を切った後、何人かに聞いてみたが皆知らなかった。
告白するとか知ってた子はいたけど、やっぱり相手も場所も聞いてなかった。

なんだかんだでもう夜の11時を過ぎていたが、マキが帰ってきたとか連絡はない。
帰ってきたか聞きたいけど、もう遅いし…。
帰ってきてたら電話するのも迷惑だろうし。

迷っていると、電話が鳴った。

「まだ帰ってこないの。香ちゃんのとこに連絡ない?」

マキのママが電話をしてきた。
まだ?
流石に嫌な予感がする。

電話の向こうでマキのパパが警察に連絡しようという声が聞こえた。

流石に黙ってられなかった。

「おばさん、マキね男の人と待ち合わせだったの。今日告白するって言ってて…。だけど、その人が誰かとかは知らなくて…。
私探しに行くから!!」


そう言って電話を切った。
引き止めるママを振り切ってマキを探しに家を出た。

あの時、マキのもっと先まで見てたら…!
マキに何かあったらどうしよう。
もしかしたら、私がマキの未来をちょっと見ちゃったから…?


最悪なイメージしか湧かない。
とりあえず、マキを見た時にちらっと見えたドトールの看板を探して走り回る。

手掛かりがない。
どうしよう。
ドトールは街にたくさんあるし、そこに行ったからってマキがいるとも限らない。


どうしよう。

誰か…!!





その時ふと南野くんの顔が浮かんだ。

そして南野くんの家に向かった。
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