妄想小説 短編

□サキヨミ
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南野くんの家に着いたはいいけど、こんな遅くに、しかも南野くんには関係ないことだし…。
迷っていると、部屋の窓が開いた。


「河嶋さん?どうしたの?」



南野くんの声を聞いた途端涙がボロボロ零れてきてしまった。

「みっ…南野くーん…」


「ちょっ!ちょっと待ってて!」


南野くんは、すぐに外に出てきてくれた。


「どうしたの?」

「…マキが…行方不明で…もしかしたら…あ…あたしのせいかも…しれない…」

泣きながらつっかえつっかえ話すと、南野くんは頭をぽんぽんと叩いた。


「とりあえず、ちょっと落ち着いて。ゆっくり話してくれる?」

そう言って、近くの公園に向かった。


「はい」

南野くんがお茶を自販機で買ってくれた。
ベンチに座って、お茶を飲む。

「…何があったの?」

南野くんが優しく聞いてくれた。
ゆっくり、出来るだけ落ち着いて説明をした。


マキが幼稚園からの親友なこと。
今日誰かに告白しに行くと言っていたこと。
その時、マキの未来をみて上手くいくよと話したこと。

マキがまだ連絡もなく帰っていないこと。
たぶん今頃警察に届けてるということ。

そして。

もしかしたら私が未来を見たからマキが何か事故とか事件に巻き込まれたんじゃないかと思っていること。




何とか説明を終わらせると、南野くんが頭を優しく撫でてくれた。

「俺が今日、変なこと言ったから…ごめん。
河嶋さんのせいじゃないよ。
警察に届けてるなら、任せるしかないよ。
送っていくから。帰ろう?お母さんが心配してるよ」


「…でも…私探さないと」

「河嶋さん、君まで何かに巻き込まれたらどうするんだ。
とにかく、今日は帰ろう。もしかしたら明日には帰ってくるかもしれないし」


「…帰って…こなかったら…?」


南野くんの顔を見る。


「明日も見つからなかったら、俺も探すよ。
だからお願いだから今日は帰ろう。
絶対君ひとりで何とかしようと思わないでくれ」



そう言って、私の手を引いて家に送ってくれた。
泣きながら歩く私に早さを合わせてくれた。
手をしっかりと握って。




家に着くと、ママが外で待っているのが見えた。

「香!」


「心配したのよ!こんな夜遅くに飛び出して!
…あなたは?」

ママが南野くんの顔を見る。

「同級生の南野秀一といいます。香さんが友人のことを相談に来ましたが、遅い時間なので送らせていただきました」

南野くんが丁寧にママに答える。
ママは南野くんに好印象だったみたいで、ひと安心した様子だった。

「この子が遅くに、ごめんなさい。迷惑かけちゃって…。送ってくれてありがとうございました」

そう言って頭を下げた。
南野くんは、いいえと言って笑った。


「南野くん、ありがとう。私…慌ててて、ごめんなさい…」


謝る私に南野くんはいいよと笑った。

「今日はゆっくり休んで。また明日ね」

そう言って、南野くんは帰っていった。




南野くんの姿が見えなくなった途端、ママの拳骨が頭に響いた。

「あんまり心配させないでちょうだい!あんたまで行方不明になったらどうすんのよ!」

「…ごめんなさい…」


そう言うとママはタメ息をついた。

「ま、あんな素敵な彼氏がいるってことがわかったし!まさかあんたがね〜」


「みっ南野くんは彼氏じゃないっ!!」

「あら?そーなの?じゃあ頑張ってモノにしなっ」

そう言って、家に入っていった。
ママの後を追いかけて家に入る。
こんな時に、そんな話。

だけど、ちょっと顔が赤くなってしまった。




寝る前にママがホットミルクを入れてくれた。
それでもなかなか寝つけなかった。
マキの事を考えると、眠れない。

南野くんは私のせいじゃないと言ってくれたけど、やっぱり気になる。
あの先をちゃんと見ていれば…。
どうしてしっかり見ておかなかったんだろう。
後悔ばかりが頭を駆け巡る。



ようやく目が重くなってきた頃にはもう朝だった。




リビングに行くとママがソファーで寝ていた。
きっとママもマキが心配で、ずっと電話を待ってたんだ。


「あ、香。少しは眠れた?」

「うん、寝たよ」


ママを心配させないように嘘をついた。
でもたぶん寝てないことはバレていると思う。

朝ごはんを無理矢理押し込み、家をいつもより30分早く出た。




もしかしたらマキは学校に来てるかもしれない。

昨日はお騒がせしちゃってごめんねなんて言いながら、彼氏の話をしてくれるかもしれない。


そんな期待を無理矢理抱いて、学校へ向かった。
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