妄想小説 短編
□一方通行 2
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蔵馬からの突然の告白から、すでに3週間すぎた。
香はあの日から、蔵馬を、皆を避けていた。
香は蔵馬の気持ちに応えられない。
でも幽助への気持ちも絶ちきれない。
だから会わない。
ただそれだけだった。
だけど、そんなこと全く夢にも思わない螢子は相変わらず皆で会うのを楽しみにしている。
「香、夏休みバイト?
もし空いてたら皆で旅行に行かない?」
悪気なく笑う螢子に、ちくりと罪悪感が突き刺さる。
「バイト入れるつもりだったけど…、いつ?」
普通に、いつものように話す。
そんな簡単なことにも気合いが必要だった。
「お盆前がいいかなーって。幽助も楽しみにしてるんだよー。香がまだ行ったことないから、絶対連れてくんだーって張り切ってたよー」
螢子の口から幽助の名前がでるたびに、胸が痛む。
大好きな友達の彼氏を、好きになってしまった罰だと自分に言い聞かせる。
「うん…、じゃあ休みとれたら、また連絡するね」
そう言って、急いでいる振りをして螢子から離れた。うまく出来たかはわからない。
でも、ちゃんと笑えてたはず。
もう少しだけ待って。
ちゃんと忘れるから。
幽助への気持ち、無かったことにするから。
それまでは会えない。
そう決めていた。