妄想小説 短編

□一方通行 番外編
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「おい!スイカ割りしよっぜー!」

桑原君が大きなスイカを掲げて見せた。

「ぅおーっし!俺いっちばーん!!」

幽助が海から走ってくる。

「ちょっと!あんたがやったらスイカが粉々になっちまうよぉ」

ぼたんが言うと、皆笑った。

「こういうのは女性陣からやりましょうか」

蔵馬はそう言ってにっこりと香に微笑んだ。

香は朝のことがあったから、少し怒ってぷいとそっぽを向いた。


「おいおい、まあだ怒ってんのかよー」

幽助が苦笑いしながら言った。

「蔵馬、おめーの女は手がかかりそうだな」

桑原君が笑いながら蔵馬の肩に手をかけた。


「これくらい、かわいいもんですよ」

そう言って蔵馬は笑った。



その笑顔をかわいいと思って悔しくなった。

蔵馬には敵わない。




そう思いながらちょっとふてくされる私に、ぼたんが目隠しをしてきた。


「はいはい、痴話喧嘩はその辺にしてさっ!香ちゃんからっ!」

そう言って、ぼたんが香をくるくると回し始めた。

「えっ?ちょっ?待って待って…」

慌てる香をよそに、皆が盛り上がる。

「はいっ!頑張ってねっ」
ぼたんが香の背中をぱしっと叩いた。


「てか、ちょっと目が回って…」

ふらふらする香に皆が笑う。

もっと右とか、真っ直ぐーだとか色々聞こえてくる。

「えっと…こっち?」

ゆっくりと前に進む。

もっと右ーという声に方向をかえる。

数歩進めると、足が冷たい。
あれ?
海?

そう思った瞬間、大きな波が香を飲み込む。




波が引くと、目隠しの外れた、ずぶ濡れの香が驚いた顔をして座っていた。



皆も予想だにしなかった展開に驚いていた。





「…ぷっ」


香が吹き出して笑い始めた。
それにつられて、皆も笑い出す。



「何だよそれーっ!ドリフかっつーの!」

「いやあー、それはないわー」


浜辺に笑い声が響いた。

ずぶ濡れで笑い続ける香に蔵馬が近づく。

くすくす笑いながら

「香には敵わないな」

そう言って、手を差しのべた。
香はその手を掴み、にっこりと微笑み返した。




そして、思いっきりひっぱった。



「え?」



蔵馬はバランスを崩して香の横に倒れこんだ。



香と同じように、ずぶ濡れになった蔵馬に香は笑った。


「水もしたたるイイ男ねっ!」




「全く…香には本当に敵いませんね…」


蔵馬はそう呟いて笑った。




そこに幽助と桑原君が走ってダイブしてきた。

「おいおい!イチャイチャしてんじゃねーぞぉっ!」

それをきっかけに、次々と皆海に向かって飛び込み始めた。


浜辺はいつまでも笑い声が響いていた。
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