妄想小説 短編

□サキヨミ 4
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「香ちゃん、おはよう」

待ち合わせの場所に着くと、既に雪菜ちゃんも螢子ちゃんも来ていた。

「ごめんね、待たせちゃって」

「ううん、まだ約束の時間じゃないし。私達もさっき来たとこよ」


今日は雪菜ちゃんと螢子ちゃんとお買い物に行く日。

楽しみすぎて、南野くんに毎日のように楽しみーって話してた。
後半は、俺とのデートよりも楽しみにしてるなと、ちょっと拗ねてたけど。


だってマキ以外の女の子と遊びに行くのなんて高校入ってから初めてだし。


「香ちゃん、あのワンピースここで買ったのよ」

雪菜ちゃんがあるお店の前で教えてくれた。
中に入ると、確かに可愛らしい服がいっぱいならんである。
値段も手頃だし、気に入っちゃった。


「私、こういうパステルカラー持ってないのよ」

そう言うと、螢子ちゃんは驚いていた。

「香ちゃん、こういうのも似合いそうなのに。
ほら、これとか」

三人は、あれも、これもと試着室を出たり入ったりしはじめた。
確かに自分で似合わないと思ってたけど、着てみるとなかなか似合うじゃん。


お店のお姉さんと、雪菜ちゃんたちに絶賛された、青い花柄のシフォンワンピースを買った。


その後も、目にはいるお店に次々に入り、その度に三人の荷物は増えていった。


「おなかすいたね」

螢子ちゃんの言葉に、自分もすっかり空腹なことに気がついた。

「あ、だってもう2時ですよ!?」

雪菜ちゃんの言葉に、三人で顔を合わせて、笑った。買い物に夢中になりすぎてた。

駅前のカフェに入り、ちょっと遅いランチを食べた。

「え?明日デートなの?」

螢子ちゃんがパスタを巻きながら聞いた。
私はドリアを口に入れて、頷いた。

「どこに行くんですか?」

「水族館に行くんだ」

「いいなあ、私も行きたいなー」


「幽助くんと行けばいいのに」

「ダメダメ!あいつそういうとこ絶対行かないし!
桑原くんなら行ってくれそうよねえー?」

「そうですねー」

雪菜ちゃんはあんまりわかってないみたいでにこにこしていた。

「蔵馬さんはなんかジェントルマンだからさ、あいつとは全っ然違うわよね」

螢子ちゃんは笑って言った。

あ、そういえば。

「ねえ、南野くん、なんで蔵馬って呼ばれてるの?」

私の言葉に、二人は目を合わせる。


「聞いてないんですか?」

ん?
何を?


「んー…私達から言うのは…。
明日本人に聞いてみて!」

そうなの?
でも、これ以上二人に聞いても教えてくれなさそうだし…。


「わかった…、聞いてみようかな…」


そう言うと二人はほっとしたような顔をした。
そんなに言いにくいことなのかしら?


そこへデザートが運ばれてきた。
ついケーキの甘さに顔がほころぶ。

「おいしいですねー」

「あ、ねえ、一口ちょうだいっ」

「あたしもー」




その後も、二人に南野くんの話を聞き出されたり、幽助くんと桑原くんの話を聞き出したりした。

雪菜ちゃんも螢子ちゃんもまだ微妙な関係らしい。
螢子ちゃんはなんか隠してるっぽいけど…。

でも、色々聞けて楽しかった。


本当に楽しくて、気がつけば外は暗くなりかけていた。

三人で笑いながら、駅に向かった。
帰り道、荷物の重さが嬉しく思った。






「ただいまー」

ママは私の荷物の多さに苦笑いしてたけど、友達が増えたことを喜んでくれた。


夕御飯を食べながら、1日の話をした。
ママは笑顔で聞いてくれていた。


「南野くんには感謝しないとね」



ママはそう言った。


うん。
本当にそうだね。

南野くんのおかげで、狭かった世界が広がってく気がする。



明日来ていく服を広げていると、早く寝なさいとママに声をかけられた。

「寝不足は美容の敵よ」



慌ててベッドに潜りこむ。


でも、なかなか眠れない。
今日の楽しかったことと、明日のこと考えると、目が冴えてきちゃう。


南野くん、あのワンピース似合うって褒めてくれるかな。



明日、晴れるといいな…。
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