妄想小説 短編 2
□everyday
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「ちょっとごめん」
久し振りのデート中。
三回目の電話。
空になったコップの氷をストローで転がしながら、向かいに置いてあるほとんど減っていないアイスコーヒーを見つめた。
「はー…」
高校卒業して、私は大学。
蔵馬は就職。
仕事が大切なのはわかってる。
でも時々。
どっちが大切なの?
って聞きたくなる。
たぶん蔵馬は、もちろん香だよ、って言って少し困った顔をするんだろう。
自分の携帯を出すと、大学の友達からメールがきていた。
「今日コンパくるー?」
…行っちゃおうかな。
「ごめん」
蔵馬が戻ってきた。
慌てて携帯を閉じた。
「ううん。大丈夫?」
今までの想いを抑え込んで笑顔を見せた。
「ああ。ちょっと連絡ミスがあったみたいで。
もう大丈夫だから。
あ、メール?いいよ、続けて」
蔵馬はそう言って汗をかいたアイスコーヒーを飲んだ。
「あ、うん。
大学の友達がね、コンパどうする?って」
「コンパ?いつ?」
「今日。
無理って返信するから待ってて」
携帯を開きメールを打ち始める。
「行ってきたら?」
蔵馬はそう言って笑っている。
「え?」
「たまには参加しておいたら?
せっかく大学入ったんだし、たまには遊ぶのもいいんじゃない?」
蔵馬の笑顔が、ものすごく遠くに感じた。
私は、二週間ぶりに会えたことに、ものすごく喜んでいるのに。
すごく会いたくて。
会いたくてたまらなかったのに。
「…じゃあ…行っちゃおうかな…」
頑張って笑った。
あの蔵馬が気がつかないんだから、上手く笑えてたんだろう。
最近、無理して笑ってる。