妄想小説 短編 2

□everyday
1ページ/13ページ


「ちょっとごめん」


久し振りのデート中。
三回目の電話。



空になったコップの氷をストローで転がしながら、向かいに置いてあるほとんど減っていないアイスコーヒーを見つめた。


「はー…」


高校卒業して、私は大学。
蔵馬は就職。

仕事が大切なのはわかってる。

でも時々。



どっちが大切なの?



って聞きたくなる。



たぶん蔵馬は、もちろん香だよ、って言って少し困った顔をするんだろう。


自分の携帯を出すと、大学の友達からメールがきていた。


「今日コンパくるー?」


…行っちゃおうかな。



「ごめん」


蔵馬が戻ってきた。
慌てて携帯を閉じた。


「ううん。大丈夫?」


今までの想いを抑え込んで笑顔を見せた。


「ああ。ちょっと連絡ミスがあったみたいで。
もう大丈夫だから。
あ、メール?いいよ、続けて」


蔵馬はそう言って汗をかいたアイスコーヒーを飲んだ。


「あ、うん。
大学の友達がね、コンパどうする?って」

「コンパ?いつ?」

「今日。
無理って返信するから待ってて」


携帯を開きメールを打ち始める。


「行ってきたら?」


蔵馬はそう言って笑っている。

「え?」

「たまには参加しておいたら?
せっかく大学入ったんだし、たまには遊ぶのもいいんじゃない?」



蔵馬の笑顔が、ものすごく遠くに感じた。



私は、二週間ぶりに会えたことに、ものすごく喜んでいるのに。

すごく会いたくて。

会いたくてたまらなかったのに。



「…じゃあ…行っちゃおうかな…」


頑張って笑った。

あの蔵馬が気がつかないんだから、上手く笑えてたんだろう。


最近、無理して笑ってる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ