妄想小説 短編 2

□paradox
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あの時まさか蔵馬が私達を裏切るなんて。

思ってもみなかった。





「黄泉、あの妖気。気づいた?」


香の質問に黄泉は頷いた。

「蔵馬以外のはなんだろう?かなり強そうだったけど」


「今の仲間じゃないのか?」


黄泉は皮肉を込めてそう言った。


香は鼻で笑った。


「つまんない冗談」



でももし。

もし本当に今の仲間だったら…。


「教えてあげなきゃね。
あいつはいつか裏切るよって」



香はそう呟いて部屋のドアを開けた。


「香」


黄泉の声に香は振り返る。
黄泉は背を向けたまま小さく、だがはっきりと言った。


「また蔵馬と組む」



香は表情を変えずに答えた。



「…好きにしな」



ドアを閉じる音がいつもより強く響いた。
香の怒りを表すように。


黄泉は目頭を抑えた。


「時がきた…か…」



黄泉の前には大きな窓があり、そこに癌陀羅の町の明かりが輝いていた。


ようやく手にした自分の国。

だが黄泉にはもう、その眩いばかりの景色は見ることは出来なかった。

香の顔も、もう見ることは出来ない。



黄泉は拳を握った。
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