妄想小説 短編 2

□Addicted to love
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平日のランチの時間が終わりに近づく時にいつも来る客。
近くにある畑中商事に勤めてる人なんだろう。
この前、会社の名前の入った封筒を持っていた。
今日もそろそろ来るはず。

香はそんなことを考えながら、ようやく空いてきた店内のテーブルを片付けていた。
5年勤めていた会社を辞めて、ここのバイトを始めたのがちょうど1年前。
その頃にはもう常連だったらしい。

カフェと食堂の間くらいの喫茶店。
いつも窓際の席に座り、ランチセットを頼んで、本を読みながらコーヒーを飲む。
会計の時に少しだけマスターと会話を交わして帰っていく。

気づけばその人が来るのを心待ちにしていた自分がいた。


お店のドアが鈴の音をたてて開くと、香は勢いよく顔を向けた。

「いらっしゃいませ!!」

いつもより1オクターブ高い声が出てしまったことを誤魔化すように、急いでテーブルを片付けた。

蔵馬はいつもの席にいつも通り座る。
香は慌てすぎないようにお水とメニューを持っていく。

「今日はAコースがオムライス、Bコースがドリアです」

そう言うと、少し悩んでから香に訊ねた。

「…オムライスのソースは何ですか?」

「あ、今日はデミグラスソースです」

「うーん…じゃあドリアにしようかな」

メニューを受け取り香はその場を離れた。

…デミグラスソースは嫌いなのかしら…。

ひとつ新しい情報が増えたことが嬉しくて、顔がにやける。


「南野くん、一緒にいいかな」

新しく入ってきた中年の男性が、蔵馬の席に行って声をかけていた。

南野…っていうんだ。

香は新しくお水を用意しながら頭のなかにインプットした。
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