妄想小説 短編 2

□Give you my heart
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香は走っていた。
魔界の闇の中を必死で。

逃げなければ殺される。

もう気配を消す余裕もなく、ただひたすら逃げていた。
力が全ての魔界では、力の無いものは殺される。
そこに同情や哀れみなどは存在しない。

香が女だろうが、手負いだろうが関係なく、捕まれば金目の物を奪われ、そしてあっけなく殺される。

それが当然の世界だから、香は必死で逃げていた。


「逃げ足はなかなか」


香はその声に、心臓を捕まれたような冷たい感覚に包まれた。
急いで脚を止め、すぐに反対の方向へ駆け出す。


「おっと、残念」


その先には追っての仲間が立ちはだかる。
香は脚を止めた。
息があがる。
身体は暑いはずなのに、氷が背中に伝うような感じ。


殺される。


そう思った。
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