妄想小説 長編 2

□最悪のコンディション
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「香ー?いつまで寝てんのー?」


階段下からお母さんの声が聞こえる。


痛い…。

傷はもう完治したというのに。
全身筋肉痛だ。
おかげで朝ベッドから起きられず、学校も休んでしまった。

ぼたん曰く、霊力も落ちてるらしい。
そんで、幽助も桑原くんも同じようになってるらしい。


「寝てないってば!!起き上がれないだけ!!」


…ってえ!!

声を出すだけでバラバラになりそうだ。

霊力が落ちてるのもわかる。
身体が重たい。

「…早く普通に動きたい」

そう言ってギシギシ痛む身体を、布団に潜り込ませた。



「辛そうですね」


背後から聞き覚えのある声が聞こえた。


「…っ!?くっ…蔵馬っ!?ってえっ!!」


勢いよく起き上がって振り返ると、笑顔の蔵馬が座っていた。
それを確認すると同時に、身体中に激痛が走る。


「…っ〜…!」

「大丈夫ですか?急に起き上がるからですよ」


蔵馬は自分のせいだなんて一ミリも思ってないような笑顔で言った。

なんでいるの?


「幽助達がかなりひどかったから、さぞかし香は大変だろうなと思ってね」


私の考えを読むように、蔵馬は言った。


「…面白がってる?」


「いいえ、そんな」


面白がってるんですね。
そんな可愛い顔で笑ってるけど、こいつ。
腹黒いな。


「そういや、また霊界から指令があったみたいですよ」

「はあ!?…ってえ〜…」

「急に起き上がっちゃ駄目ですよ」


蔵馬の顔が昨日はあんなに素敵に見えたのに、今は悪魔のようだ。
あーにくったらしい。

「ってか指令って?また?」

「ええ。飛影が幽助に渡してましたよ。
指令のビデオ」

ビデオ?
飛影?

「そういうシステムなの?」

「…さあ?」


変なの。

「でも私にはビデオ届いてないから、関係ないよね」

そう言って布団を被ろうとしたとき。

蔵馬が笑顔でビデオを取り出した。


「…くっそぉ…」


身体がこんなんじゃなかったら。
あの爽やかな腹黒笑顔を、ぶっ叩いてやるのに。


私の苛立ちを知ってか知らずか、いや。
思いっきりわかってて、笑っているんだ。


ムカつくー!!
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