妄想小説 長編 2

□一回戦不参加につき
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「遅いな…」

香が出ていってからかれこれ二時間はたっている。

「なんかあったんかな」

桑原くんはそわそわしながら、時計とドアを交互に見ていた。

香のことだから、先に1人で食べてるんじゃないかなんて思っていたけど。
流石に遅すぎる。

「探してきます」

そう言って立ち上がると、桑原くんも立ち上がった。

「俺も行くぜ」

二人で部屋を出ると、ドアに何かが当たった。

少し溶けて柔らかくなったアイスが1つ、落ちていた。

それを拾い上げ、嫌な予感が頭をよぎった。

「まずいな」

「おいおい。また香拐われたっつーのか?」

また。

そういえば、前回も拐われたな。
拐われ癖のある人だ。

「とりあえず探してみよう」

そう言って再び廊下に出ると、意外にも飛影が呼び止めた。


「おい」


「探してやる」


そう言って、邪眼を開いた飛影。

「飛影からそう言うなんて珍しいですね」


俺の言葉を無視して、飛影は目を瞑った。



「…ダメだ。どこに居るかわからん。
呪符か何かでわからんようにしてるか、死んでるかだ」


ぶっきらぼうにそう言った飛影は、窓を開けて出ていってしまった。


「あ!おい!!飛影、どこ行くんだよ!!」

桑原くんが窓に駆け寄り、すでに見えない飛影に向かって叫んだ。


呪符か…。
死んでないことを祈って探すとするか。

「待ちな」


探しに行こうとする俺たちを、覆面が呼び止めた。


「香なら大丈夫だ。
逆に敵の罠かもしれない。うかつに動くな」


若い女性の声に、少し驚く。
てっきり幻海師範だと思っていたからだ。
それは桑原くんも同じだったようで、驚いた顔をしている。


「そうは言ってもよ…」

桑原くんの言う通り。
そうは言ってもほっとくわけにはいかない。

「とりあえず探してきます」


覆面もため息をついてから、俺と桑原くんの後に続いて部屋を出た。


「浦飯、1人にして平気か?」

「寝込み襲うような奴なら勝てるさ」

桑原くんにそう言ってから、3人別れて探しに向かった。
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