妄想小説 長編(完結)

□それぞれの修行
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『別々の任務!?』



ある夏の午後、ぼたんが幽助と私、別々の任務を持ってきた。
幽助は霊光波動拳の継承トーナメントに参加し、乱童の目的を阻止し倒すこと。

私は、盛霖という奴の護衛をすることになった。



そして次の日、それぞれの任務先へと向かった。


電車とバスを乗り継いで5時間。
ようやく目的の場所が見えた。
長い階段を抜けると、古い大きな山寺があった。


「でっけえー…」

寺のあまりの大きさと、長旅の疲れに、しばし入り口で呆然としてしまった。


すると、一人の男が声をかけてきた。

「そこの女、尚願寺に何か用か?」


「あ?あぁ、ここの盛霖っつー人に会いに来たんだけど」

男は不審者を見るような目を向けた。

まあ確かにこんな山寺に来るような女は怪しいわな。


「あー、来たか。おい、その子は客人じゃ、案内せい」


寺の高い塔から声が聞こえた。
見上げると、一人のじいさんがこっちを見下ろしている。

「…あのじーさんが盛霖って人?」

「なっ!師範をじーさん呼ばわりとは…っ!」


男は少し怒っているが、寺の中に案内してくれた。

寺の中も古くはあるが丁寧に管理されているのがわかる。

そして奥の部屋へと案内される。

「こちらが師範の部屋です。くれぐれも失礼のないようにお願いしますよ」

男に念を押される。

「はいはい」

そう言って扉を開けると20畳くらいの部屋の奥に、さっきのじーさんが座っていた。


「よう、来たな。まあ入れ入れ」


奥に招かれる。
じーさんの前にある座布団に座ると、じーさんが口を開いた。


「コエンマから話は聞いとる。…確かになかなかおもしろいおなごじゃ」


「コエンマにはあんたを護衛するようにって言われたけど…。なんか寺に何人も強い奴いるみたいじゃん。私いらなくない?」


寺に入ってから、ずっと私に警戒するようなピンとした霊気を感じていた。


「わしはもう長くない。そろそろ幻海のように力を継承しなければならない」


じーさんはそう言って茶をすすった。

「幻海って霊光波動拳の?」

「おぉ、知っておったか」

まあ、昨日聞いた名前だからね。
幽助はちゃんとやってっかな?



「ワシには30人の弟子がおってな。その中の一人に継承するつもりじゃった。
ワシは幻海のように、強ければ誰でもいいとは考えんからな。」


そしてじーさんが小さく言った。

「しかし、弟子の中にワシを殺して奥義を盗もうとしている奴がおる」




部屋の空気がはりつめた。


「…どいつかはわかってんのか?」


じーさんはゆっくりと頷いた。


「ワシの一番弟子じゃ。
おそらくもののけにそそのかされておる」




「妖怪ってことか?」

「ああ、そうだ。おそらく、乱童とかいう妖怪だ」


「乱童!?」


私の表情の変化にじーさんが反応する。

「まさか乱童を知っておるか。さすが霊界探偵じゃのう」

「あ、いや。
名前だけなんだけど…」


「弟子はワシを殺して奥義を得たあと、乱童に殺されるじゃろう。
乱童はあらゆる使い手を殺して奥義をものにしているやつじゃ。
どうそそのかされたかはわからんが、弟子自身にも邪な心があったのは確か」



じーさんが茶をすすった。

「でもさ、まだじーさんのが強いんだろ?弟子なんだからさっさと叩き出しゃいいんじゃないの?」

私も茶をすすりながら聞いた。

するとじーさんは小さく笑って言った。

「ワシはもうあいつらには勝てんわ。とっくに力はもうない。奥義を使いこなす力もな。
あるのは奥義そのもののみじゃ」

その顔はどこか寂しげに見えた。
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