妄想小説 長編(完結)

□桑原の春
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「和ちゃん、ちょっと今日暇?」

幽助と二人で和ちゃんのクラスに向かう。

「な…っ!まさかまた巻き込むんじゃねえだろうな」

和ちゃんは後退りした。
察しがいいね。

「ビデオさ、うちの調子悪くてさ。和ちゃんちの貸してよ」


「ビデオって、それ飛影から渡されたやつだろ?」


「見たくねーんだけどよ、何か気になってな」


「あ!幽助!違反!!」

三人で話していると、螢子が割り込んできた。

「んだよ、うっせーな」

「ビデオ持ってきちゃダメじゃない!
でも、何のビデオ?」


「う」


螢子に突っ込まれて固まる幽助。
…あたしも面倒だから逃げよ。


「じゃ、和ちゃん、放課後ねー」


「あ!おい!香!」




ま、螢子がらみのことは幽助に任せておけばいいんだよ。
昔からそうしてたしね。
何とかするでしょ。






放課後。


和ちゃんちにつくなり幽助はぼたんに食いついた。

「おい!ぼたん!てめー螢子に何て説明しやがったんだ!?」


「いや、ほら、探偵ってのを霊界とか抜きに話したらそんなことになっちゃってさ…」


「?何?螢子なんて言ってたの?」


「なんか俺らが更正するために探偵の助手になったとか、なんとか…」


「ほら、あんまり詳しく話すとさ!それだけ危険に巻き込まれることがあるってことだしね」



なんかまあ、そうなんだろうけどさ。
更正って…。


「おい、そんなことより早くビデオ見ようぜ」


和ちゃんが三人の話を遮って、一人テレビの前に座っている。

「和ちゃん、見たいだけで協力する気ないでしょ」



幽助がデッキにビデオを入れた。
テレビには、コエンマの顔がうつった。

「な、このちっこいガキが霊界の偉いやつ!?」

和ちゃんがコエンマを見て声をあげた。
私とおんなじこと言ってるわ。


「今回は一人の少女を救出してもらう。
心ない人間に私欲のため監禁されているのだ。
少女は氷女でな、彼女の流す涙は氷泪石となる」


氷泪石?


「闇値で数億は下らないと言われている石だよ」


私の疑問にぼたんが答える。
…数億か…。
見当つかない額だな。



「彼女の監禁場所は骨爛村の垂金権造の別荘だ。
こいつは宝石商で、氷泪石を裏でさばき飛躍的にのしあがった男だ」


テレビにうつった男を見ると、本当に人間か?

「妖怪より妖怪みてーなやつだな」

「いかにもって面してるぜー!」

「きもーい」

ポテチを食べながらそれぞれ感想を言う。
皆同じような印象のようだった。


「そしてこれが少女の映像だ」



テレビにうつる女の子。
超かわいいんだけど。


そう思った瞬間、隣に座っていた和ちゃんが急に立ち上がった。


「なに?和ちゃ…」


「惚れた…!」


へ?


そう言うと和ちゃんは部屋を出ていってしまった。

「お、おい!桑原!まだビデオの途中だぜ!?」


「もう十分だろ!こうしている間にも彼女はひどい目にあってるんだ!!」


止める間もなく和ちゃんは家を飛び出して行ってしまった。


「なんだありゃ」

「和ちゃんに春がきたってことだろ」

「いや〜青春だねえ」


和ちゃんが出ていった後、三人でビデオの続きをゆっくり見てから、幽助と私は和ちゃんの後を追った。







電車とバスで一時間半、あっというまに骨爛村についた。


「待っててくれよ、雪娘さん!!俺が必ず助けるぜえーっ!!」


和ちゃんが一人熱くなっている。



「マジで惚れてんね。やっぱり、黙っておく?」

幽助に小声で耳打ちする。

「その方が良さげだな」




和ちゃんが出ていった後、コエンマは言った。


「少女の身元を聞けばお前たちはすぐに動かざるをえないだろう。お前たちは借りがあるしな。
少女の名は雪菜。
…飛影の妹だ」





まさか飛影にあんな可愛い妹がいたなんてねー。


「俺もあんな可愛い妹がいればなあ」


「あ?何か言った?」

幽助の言葉に、思いきりガンを飛ばす。

「…こえー妹だな」


幽助をシメようとした時、目の前に一人の黒服が現れた。


「お前たち、ここは私有地だ。とっとと立ち去れ」



「道に迷って帰れねーな」

「垂金ってやつの別荘に泊めろ」

二人が堂々と言い返す。


「それは出来んな。仕方ない」


黒服はそう言うと、スボンが破れ、中からタコみたいな足が現れた。


げ!
妖怪かよ!


「無理にでもお帰りいただこう。…死体でな」



そう言ってニヤリと奴は笑った。

「おい、ここに監禁されてる女の子ってのは妖怪なんだ。いわばお前の仲間だろ?人間にひでー目にあわされてんのに、何とも思わねーのかよ」


幽助が奴に話すが、奴は笑っている。

「それがどうした?
俺は金と欲望のために魂を売ったのさ。
お前らだって大金積まれりゃ犬の真似だってやるんだろ?」



奴の言葉に私達はほぼ同時にキレた。


『一緒にすんじゃねーよ!ヘド野郎が!!』


そして、向かってきた奴を私が蹴りあげ、和ちゃんが霊剣でバラバラにして、幽助が霊丸で吹っ飛ばした。


「楽勝じゃん」

「胸くそわりーな!全員ぶっ飛ばしてやる!」


そうこう言ってると、次々に妖怪が現れてきた。


「俺の恋路を邪魔するやつは!!俺に切られて死んじまえー!!!!」


和ちゃんが次々と妖怪を切ってくれるから楽チン。
数えるの忘れてたけど10匹くらい倒した頃、ようやく垂金の別荘に到着した。
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