妄想小説 長編(完結)
□魔性使いチーム
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「やってやんぜ!まだイチガキのむしゃくしゃがおさまってねえからな!」
幽助は一人張り切っているけど、流石にこの流れはキツい。
「魔性使いチームの入場です!!」
ネコちゃんの言葉に、マントを被った五人が入ってきた。
「大将、前へ」
「俺がいくべ」
マントを風でとばして、頭に角の生えた男が前へでてきた。
「風使い陣だ!陣がでてきた!!」
観客がざわめいて、歓声をあげた。
「風使い?まさか!?」
「蔵馬、知ってんのか?」
「ああ、魔性使いチームとは仮名のようだな。
奴らの正体は魔界の忍だ」
蔵馬は幽助に説明する。
なんとなく表情が暗い。
…強い相手ってことね。
「ま、とにかく行ってくるわ」
幽助がリングへ向かった。
「タイマンで勝ち抜き戦。相手がゼロになるまで戦うべ」
陣はありがたいことに、こっちも希望していた勝ち抜き戦を選んでくれた。
「おめ、いい風ばもってんな」
?
陣と幽助が戻ると会場のスピーカーから声が聞こえてきた。
「これより大会本部よりメディカルチェックを行います」
は?
メディカルチェック?
「連戦する浦飯チームへの体調考慮のため行います」
本部の言葉に会場がブーイングを向ける。
なんか怪しい。
この大会があたしたちのためにするようには思えないけど…。
私達に色っぽいナースが近づいてきた。
そして手をかざした後、私と飛影を指さして言った。
「あなたとあなた。来ていただけますか?」
は?
「いらん世話だ」
「あたしたちより、和ちゃん診てやれよ」
「二、三、質問するだけですわ」
私達の言葉を無視して、テントまで連れて行かれる。
「お腹は痛くありませんか?気分は悪くありませんか?」
…この女ふざけてるのか?
「くだらん」
飛影が女を無視してテントから出ていこうとすると、女は言った。
「ストレスがたまっているようですわね。やはり少し休んだ方がいいですね」
飛影の足がテントの外に出る瞬間、電気のようなものが走って見えた。
なに!?
「結界師、瑠架でございます。
もうここから出ることは出来ません。二回戦が終わるまでは…」
はあー?
…なるほど、そういうわけね…。
「総合的に判断した結果、飛影選手と浦飯香選手は戦いには不適格ということで二回戦を欠場します」
マイクから流れた言葉に、会場は沸いた。
「何が総合的にだ!てめー!!」
幽助がネコちゃんに詰め寄る。
蔵馬がちらっとこっちを見た。
確かに、飛影は言わないけど、あたしも飛影も戦える状態じゃない。
…でも。
どっちに転ぶか…。
「先鋒!前へ!」
ネコちゃんの言葉に、相手チームが何か揉めてる感じだ。
…あれ?
陣ってやつがやるんじゃないの?
あんなにやる気満々だったくせに。
別の奴が前に出てきた。
うちは?
蔵馬が前へ出た。
「俺一人で何とかすると言いたいとこだが、奴らの妖気がそうもさせてくれない…。
出来るだけ奴らの手の内を暴いてみる。後は…頼む」
蔵馬が幽助にそう言ってリングに向かった。
…蔵馬。
「香、動けないなら休め。
少しでも早く霊力を戻すことを考えろ。
奴らが負けたら、ここにいる全員倒さなきゃならんからな」
飛影の言葉に、頷いて椅子に座った。
確かに。
あの二人なら大丈夫だろうけど…。
汚い大会だし。
罠はこれだけじゃないかもしれない。
いざとなったら、全部ぶっ潰せばいいんだ。
リングに目を向けると、蔵馬の相手が自分の体に筆で模様を書き始めた。
そして蔵馬に向かっていった。
蔵馬はそれをかわすが、相手もなかなか早く、武器を作り出す隙がない。
「ち、相手を見極めてから戦法を決める蔵馬の悪い癖だ。
あれだけスピードのある相手だと隙を作りにくい」
飛影が舌打ちをした。
…なるほど、蔵馬はそういうタイプなのね。
蔵馬が一瞬バランスを崩した時、相手が蔵馬の足に何かを筆で書いた。
「蔵馬!!」
蔵馬の動きが鈍った。
「もう逃げられねえぜ!」
相手はそういうと蔵馬の両手足に同じ模様を書いた。
「獄錠の粧!
手足に70キロの重りをつけているような感じだろう?もう逃げられねえ」
70キロ…?
いくら蔵馬でも280キロも抱えて、あいつと戦うのはまずいんじゃ…。
蔵馬は相手が向かってくるのを立ち尽くして見ている。
「身じろぎせんとは覚悟を決めたか!?一撃で決めてやるぜ!!」
相手が蔵馬に襲いかかった瞬間。
蔵馬が髪を揺らした。
そして相手の体が血にまみれた。
「悪いな。使えるのは手足だけじゃない」
蔵馬の髪を薔薇の鞭がまとめ上げている。
「…かっこ…いいー…」
つい口に出てしまった。
「…ふっ」
飛影が笑う。
「…何よ」
「なにも」
…何なんだよ。
ハッキリ言えっつーの。
「もう勝負はついた。俺への妖気を解いて治癒に充てないと危険だぞ。
君は死ぬには惜しい使い手だ」
蔵馬の言葉に相手は笑って拳を振り回した。
「光栄だ!」
振り回す度に血が傷から吹き出している。
大振りのパンチは蔵馬に簡単にかわされている。
「よせ!本当に死ぬぞ!」
蔵馬の言葉も無視して相手は当たらない攻撃を繰返し、ゆっくりとリングに沈んだ。
「…もう立てないだろう」
ネコちゃんがカウントを始めた中、相手はゆっくりと口を開いた。
「…封じた…」
「なに?」
「あんた…俺の返り血には無頓着だったな。
俺の化粧水の正体は、俺の血だ。
…俺が死んでも10分くらいは術は生きる。
妖気を封じて…どこまでやれるかな…」
相手はそう言って、絶命した。
妖気を封じた…って。
それじゃ、次は妖気無しで戦うってわけ?
「10!蔵馬選手の勝利です!次峰前へ!」
ネコちゃんの言葉に相手の一人がマントを脱いだ。
「画魔…よくやった。お前の仇は俺が撃ってやる」