妄想小説 長編(完結)

□決勝前夜
1ページ/6ページ



「幻海師範は?」


そう言えば姿が見えない。

「ああ、何かどっか行っちまった。用があるっつってたな」


…まさか。






準決勝前日。

幻海師範は特訓の後、私に突然聞いた。


「香、蔵馬とはうまくいってるのか?」


幻海師範のありえない質問に思いっきり狼狽えた。

「なっ!何だよいきなり!うまくもくそも、どーもなってねえよ!!」


顔を真っ赤にして否定したが、幻海師範は真剣な表情を変えずに続けた。


「蔵馬は妖怪だ。
お前は蔵馬より先に老い、先に死ぬ。
それをわかっているか?」

幻海師範が茶化しているわけじゃないのがわかる。
私も素直に答えた。

「…わかってる」


「…若さのために妖怪になりたいと思うか?」


幻海師範の質問に目を丸くした。

「まさか。んなこと思ったこともないよ。
あたしはあたし。ばーさんになっても変わるわけじゃない。
それで蔵馬があたしのこと嫌いになろーが関係ない。
あたしの夢は孫に見守られて大往生だからね」


そう言って笑うと、幻海師範も笑った。

「ふっ。安心しな。蔵馬はそんな奴じゃない」


「…って別にそんなんじゃないっつの!!」


「時には素直にならなきゃあたしみたいになるよ。
…ちゃんと幸せになりな」


「幻海師範?」


「さ、明日の相手の試合でも見に行こうか」


そう言って、最後の私の疑問は流されてしまった。









幻海師範があんな風に話すなんて。


…何かあったのかな。



「お、浦飯!起きたのか」

和ちゃんの言葉に振り返ると、幽助が目を覚まして、怖い顔をしていた。


「戸愚呂が戦ってる」



「え?ああ、今頃準決勝やってっからな」

和ちゃんの言葉に幽助は立ち上がり部屋を出ていってしまった。


幽助?




部屋にいると、和ちゃんが戻ってきた。

「浦飯の奴いきなりどうしたんだ?
闘技場とは反対の方に行っちまった」




…まさか。


嫌な予感がした。



「あ!おい!香もかよ!!」



私も部屋を飛び出した。


幽助…。


幻海師範…!!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ